抄録
本稿では,複数の生徒による遠まわしな悪口や嫌がらせ,無視などのいじめがある学級において,再契約法による介入を行った事例を報告した。再契約法は,①学級指導会で,学級担任が学級の状況に対する気持ちを自己開示する,②個別面接でいじめ行為や学級の状態をどう思っているかを生徒から聞きとる,③学級討論会で生徒の気持ちや意見を共有して,学級の目標とルールを設定する,④学級がゼロの状態であることと学級目標とルールを確認して再スタートする,という順序で行われた。その結果,いじめの対象となっていた生徒が教室に復帰して,その後も教室で学校生活を送った。また,いじめのない安心できる学級にしたいという雰囲気が醸成されて,学校生活の満足度の高い学級となった。以上から,再契約法がいじめ解消の援助に有効であると考えられることを指摘した。また,いじめを加害者と被害者の二者関係でとらえるだけなく,学級集団の特性にあった人間力を高める指導を行うことが有効であることを指摘した。