抄録
目 的
本研究の目的は,はじめて父親になる切迫早産妊婦の夫が抱く,父親になることや妊娠や出産に対する思いを明らかにすることである。また,これらの変化を入院直後から出産に至るまでの間追跡し明らかにすることである。
対象と方法
切迫早産のために入院し出産に至った初産婦の夫3名を対象にした。データ収集には,半構成的面接法を用い,入院時とそれ以降は週に1回,夫に対してのみ行い,内容分析を行った。
結 果
1.対象者たちの気持ちの中では,「父親になるという自覚」と「妊娠や出産に対して感じている無力感や疎外感」が共存していることが明らかとなった。
2.対象者にとって父親になるという自覚は出産に至るまで揺らいでいた。この揺らぎは個々で異なっていた。
3.対象者たちは妊娠や出産に対し無力感と疎外感を持続的に抱いていた。
結 論
本研究によって切迫早産で入院した妊婦の夫たちの気持ちの変化が明らかになった。妊婦の入院は夫たちを父親として発達させる面もあるが、揺すぶる出来事でもあった。そのため看護者は夫たちの気持ちに耳を傾け,対象理解に努めることが必要であることが示された。また,コミュニケーションを工夫して,父親になるという自覚の発達を支援し,妊娠や出産に参加していけるようなかかわりを検討していくことの必要性が示唆された。