抄録
本事例は,スクールカウンセラーが配置されていない学校現場において,学級担任と報告者がチームを組んで学校不適応児童へ援助をした報告である。学級生活満足度尺度や,担任の日常観察や個人的な資料をもとに複数の教師によって多面的なアセスメントを継続することにより,担任の共感的な対応が促進され,それによってA児やA児の母親とリレーションを形成できたのはこの事例の大きなポイントであると考えられる。また,A児を取り巻く学級の児童をも含めた集団の教育力を生かした援助により学級の児童のリレーションを形成したことが,A児はもちろん他の学級児童の学校生活に対する適応状態を良好にしていったと考えられる。個々への対応を学級集団を通して行うことは,小学校においては効果的であることが示唆された。