学級経営心理学研究
Online ISSN : 2434-9062
インクルーシブ教育への移行期と整備完了期における児童の学級適応感の比較
深沢 和彦河村 茂雄
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2021 年 10 巻 1 号 p. 31-42

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抄録
本研究は,児童の学級適応感について,インクルーシブ教育への移行期であった 2005 年のデータと整備が完了したとされる 2017 年のデータを比較検討し,インクルーシブ教育の進展を検証する材料の一つとして提供することを目的とした。研究の結果,児童の学級適応感は,2005 年と比べ,全体として高くなっているものの, 2017 年調査においても,学級雰囲気の指標を除き,依然として対象児と周囲児の学級適応感には差が認められた。また,支援対象児を校内支援リストに掲載された発達障害傾向のある児童に拡大すると,60%強が満足群に属しておらず,さらにその半分の 30%は,不満足群であった。つまり,児童の学級への満足度や学校生活に対する意欲・充実感については,12 年後の 2017 年調査においても,インクルーシブ教育の理念と乖離する状況があることが明らかとなった。また,顕著に発達障害の症状がみられる児童だけでなく,グレーゾーン児の学級適応も含めて考えていく必要があることが示された。
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© 2021 日本学級経営心理学会
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