学級経営心理学研究
Online ISSN : 2434-9062
10 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 藤原 寿幸 , 河村 昭博 , 河村 茂雄 , 小野寺 敦子 , 畑 潮
    2021 年10 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,畑・小野寺が作成した Ego-Resiliency 尺度(ER89)日本語版の小学生用 Ego-Resiliency 尺度(ER89-K)を作成し,その信頼性,妥当性の検討を行った。対象は公立小学校 1 校,小学校 4,5,6 年生 214 名(男子 105 名,女子 109 名)であった。主成分分析の結果,12 項目 1 成分解が得られ,十分に高い内的整合性(α=.89)が確認された。また,小学生用 Ego-Resiliency 尺度(ER89-K)の妥当性の検討を行ったところ,ストレス反応との関連から本尺度の構成概念妥当性が確認された。以上により,小学生用 Ego-Resiliency 尺度(ER89-K)の信頼性と妥当性が明らかにされた。
  • 村上 達也 , 西村 多久磨
    2021 年10 巻1 号 p. 9-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,児童を対象に自己意識と学級適応の指標である学級満足度との関連を検討することであった。小学生 449 名を対象に,質問紙調査を実施した。相関分析の結果,公的自己意識は被侵害得点と,私的自己意識は承認得点と関連が強いことが明らかにされた。また,分散分析の結果,(1)学級生活満足群に属する児童は,公的自己意識は比較的低く,私的自己意識は比較的高いこと,(2)侵害行為認知群に属する児童は,公的自己意識および私的自己意識が最も高いこと,(3)非承認群に属する児童は,公的自己意識および私的自己意識が低いこと,(4)学級生活不満足群に属する児童は,公的自己意識が比較的高く,私的自己意識が低いことが明らかにされた。以上の結果を踏まえて,各群に合わせた援助および指導のあり方について議論された。
  • ―自己評価と組織内評価の観点から―
    平野 達郎
    2021 年10 巻1 号 p. 19-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,中学校学級担任教師の組織への貢献行動が学校改善に及ぼす影響について,貢献行動の自己評価と組織内評価の観点から調べることを目的としている。まず,学級担任教師の組織への貢献行動の傾向として,組織への貢献行動の P 機能は自己評価が他者評価よりも有意に低く,M 機能は差が見られなかった。これは,P 機能について,組織への貢献行動を謙虚に捉える傾向があるためだと推察された。次に,組織への貢献行動と学校改善との相関関係や影響関係を検討すると,自己評価より組織内評価の妥当性が高いとの結論を得た。貢献行動の学校改善への影響を調べると,「協働性」には「協力」,「創造性」には「リード」「向上心」「協力」,「専門性」には「リード」「向上心」「連携」,「効率性」には「向上心」「協力」が影響を与えていることが明らかになった。これらの分析により,学級担任教師等の意識をどのように理解し,どのような組織への貢献行動を期待して学校改善を進めていくかについて,一つの視点を示すことができた。
  • 深沢 和彦 , 河村 茂雄
    2021 年10 巻1 号 p. 31-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,児童の学級適応感について,インクルーシブ教育への移行期であった 2005 年のデータと整備が完了したとされる 2017 年のデータを比較検討し,インクルーシブ教育の進展を検証する材料の一つとして提供することを目的とした。研究の結果,児童の学級適応感は,2005 年と比べ,全体として高くなっているものの, 2017 年調査においても,学級雰囲気の指標を除き,依然として対象児と周囲児の学級適応感には差が認められた。また,支援対象児を校内支援リストに掲載された発達障害傾向のある児童に拡大すると,60%強が満足群に属しておらず,さらにその半分の 30%は,不満足群であった。つまり,児童の学級への満足度や学校生活に対する意欲・充実感については,12 年後の 2017 年調査においても,インクルーシブ教育の理念と乖離する状況があることが明らかとなった。また,顕著に発達障害の症状がみられる児童だけでなく,グレーゾーン児の学級適応も含めて考えていく必要があることが示された。
  • 武蔵 由佳 , 河村 茂雄
    2021 年10 巻1 号 p. 43-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,子どもたちの友人関係は小学生から高校生に至るまでの加齢とともにどのような発達的変化があるのかについて検討することを目的とした。小学生(男子 684 名,女子 657 名),中学生(男子 775 名,女子 722 名),高校生(男子 393 名,女子 392 名)の合計 3,623 名を対象とした。結果,男子は小学校 4 ~ 6 年生で,ギャンググループとチャムグループ(行動面)が高く,チャムグループ(心理面)が低かった。中学校 1 ~ 3 年生ではチャムグループ(心理面)が高くなり,高校 1 ~ 3 年生ではピアグループの得点が高まることが明らかになった。女子は小学校 4,5 年生では男子同様ギャンググループとチャムグループ(行動面)が高いが,6 年生でチャムグループ(心理面)が高まり,高校 3 年生まで継続することが示された。また小学校 5 年生から中学校 3 年生まではピアプレッシャーが高く,高校 1 ~ 3 年生になるとピアグループが高まり始めることが明らかになった。本研究から男女別の友人関係の発達的変化が明らかになった。
  • 橋本 久美 , 若松 美沙 , 若松 昭彦
    2021 年10 巻1 号 p. 53-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,異学年交流活動を計画・運営する小学 4 年生から 6 年生までの児童を対象に,異学年交流活動に向けた話合い活動とその実践に着目して,各学年の向社会的判断の特徴を検討することであった。向社会的判断の発達レベル(Eisenberg-Berg,1979)を用いて,各学年の話合い活動での発話の解釈的分析,および話合い活動とその実践のワークシートの記述分析を行った。その結果,本研究で対象とした 4 年生では,利己的な判断とともに紋切り型の利他的判断が多くみられたが,5 年生では,他者の尊厳を守る必要性を考慮に入れた判断が一定の割合で認められた。さらに,6 年生では,異学年交流の中核を担うなかで,より高次の判断である利他的判断を内在化する段階に移行しつつある児童もみられた。向社会的判断という認知的枠組みを用いて,異学年交流活動における各学年の特徴を明らかにした点に,本研究の意義があると考えられる。
  • ―特別活動に着目した一考察―
    若松 美沙 , 若松 昭彦
    2021 年10 巻1 号 p. 65-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,教育現場で課題とされる子ども主体の学びを支える教育環境を創造するために,近年着目されているエンゲージメント研究の動向を整理し,今後の展望を考察することを目的とした。具体的には,海外のエンゲージメント研究の動向について,意義や重要性,動機づけとの関連,文脈の影響,サブタイプ,機能の観点から整理するとともに,我が国のエンゲージメント研究の動向として,教科関連研究,心理学関連研究,教育学関連研究を中心に概観した。結果から,学ぶ環境として,①学習者の興味・関心の喚起や価値の実感,②協同学習での他者との積極的な関わりや明確な役割分担がエンゲージメント促進につながるという研究成果が見出された。一方,子どもの学級での生活を対象にしたエンゲージメント研究の進展が課題とされた。そのため,子どもが自分たちの力で学級での生活を創るという特質をもつ特別活動が,エンゲージメント研究の進展に貢献する可能性があることが示唆された。
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