抄録
本研究は,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためにさまざまな活動が制限された中で,首都圏A市の中学校長たちが最後の教育の機会である卒業式をどのように運営したのかを調査し,卒業式の活動の中で,とくに突然に式の直前になって教育委員会から禁止された「卒業生の合唱」が校長たちにとってどのような意義をもつのかを明らかにするものである。校長たちは,「三年間の教育の成果」を,とくに象徴的なものとして「卒業生の合唱」を通じて,いかに保護者や生徒たち自身に確認してもらうかに苦慮していた。その際,校長たちは「生徒,保護者,教職員」の合唱にかかわる感情に共感を示し,教育委員会という上位の組織の禁止を表面的には逸脱しないようにしながら,時には実質的に逸脱してでも,「卒業生の合唱」の実現を目指していた事実が確認された。