抄録
2020 年度,新型コロナウイルスの感染予防のため,他者との直接的なかかわりや協働活動の展開が制限された状況で学校教育は展開された。本研究では,そのような状況が,小学校低学年の児童にどのような影響を及ぼしたのかを,探索的に明らかにすることを目的とした。そこで,同じ地域の同じ学校の低学年の児童を対象にして,新型コロナウイルス問題発生以前の2019年度と感染症対策が徹底された2020年度に,児童の学級生活満足感と意欲(スクール・モラール)を調査し,年度ごとの差を検討した。その結果,全体的に,被侵害得点が2019年度よりも2020年度の方が低く,非承認群の出現率の増加と学級生活不満足群の出現率の減少が認められた。他者とのかかわりが制限されたため被侵害行為が減少したことで,2年生と3年生では,学級生活不満足群から非承認群への移行がなされているのではないかと考えられた。特に学年別では,1年生においては2020年度に承認感,友達関係,学級の雰囲気が有意に低かった。1年生には「小1プロブレム」の問題が指摘されてより手厚い支援が期待されている中で,コロナ禍で個別対応などが制限された可能性が推測された。