2015 年 19 巻 1 号 p. 19-25
大学等の高等教育機関において,電子メールは教育研究のための重要インフラであり,安定的かつ継続的な提供が求められている.メールサービスがパブリッククラウドのSaaS(Software as a Service)として,妥当な費用で提供されるようになったため,大学等においてもその利用が増えている.SaaSでは,原則として提供される機能をそのまま使う必要があり,カスタマイズを多用する傾向が強い既存オンプレミス環境から移行する場合,操作に慣れるための利用者の負担が大きいが,学生,教員,職員ごとに最適な移行時期は異なる.広島大学では平成27年9月稼働開始の電子計算機システム更新に先がけて全学メールのSaaS移行を実施し,2月から8月の間で,各利用者が都合のよい日を選んで移行できる手法を取り入れた.本論文では,全学メールのSaaSへの円滑な移行を目指す支援システムの実装について述べ,約20,000人の利用者の移行状況などから得られた知見を示す.