抄録
縦隔嚢胞に対し胸腔鏡下に切除した症例を経験したので, 臨床診断上の縦隔嚢胞の分類について文献的考察を加え報告する. 症例は61歳, 男性. 健康診断の胸部X線にて右側後縦隔の異常陰影を指摘され近医受診. Retrospectiveに見ると4年前より同部にmassが認められており, 年に1mm程度の増大を認めていた. 後縦隔の良性嚢胞性病変が疑われたが, 増大傾向が認められること, 確定診断に対する本人の強い希望で, 手術目的に当院紹介となった. CT, MRI, 超音波内視鏡により, 食道の内輪筋と連続を持つ, 粘稠な液体を内容に持つ嚢胞性病変として捉えられたため, 食道嚢胞の診断で胸腔鏡下腫瘤摘出術を施行した. 組織学的には内腔は多列円柱線毛上皮で, 周囲には結合組織, 腺組織および筋組織が存在し, 気管支嚢胞との鑑別が困難であったが, 前腸由来の嚢胞性病変であるforegut cystと診断した.