2009 年 23 巻 5 号 p. 713-717
びまん性悪性胸膜中皮腫に対する胸膜肺全摘術は極めて侵襲が高いため,術後合併症低減を目的に胸腔鏡手術を適用した.症例は55歳男性.咳嗽・呼吸困難感を主訴に近医受診.右胸水を指摘され,細胞診の結果,class V腺癌と診断され当科紹介.アスベスト曝露歴は30年前にあった.入院後,胸腔鏡下胸膜生検を施行し悪性胸膜中皮腫,上皮型と診断され諸検査の結果stage Iであった.手術は5,5,7cmの3箇所の創から肋間を開大せずに胸腔鏡補助下に行った.鈍的剥離により一度も胸膜腔を開くことなく,胸腔鏡補助下に心膜および横隔膜の合併切除再建も可能であった.術後経過は良好で13日目に自宅退院となった.初期のびまん性悪性胸膜中皮腫に対する胸腔鏡手術の可能性が示唆された.