日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
部分肺静脈還流異常を合併した肺癌の一切除例
近石 泰弘能勢 直弘市来 嘉伸永島 明安元 公正
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2010 年 24 巻 4 号 p. 704-709

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抄録
症例は81歳男性,胸部X線異常にて当院紹介.CTにて左肺S4に2.3×1.5cm大の腫瘤影を認め,PETにてSUV max 3.23のFDGの集積があり,原発性肺癌を強く疑った.また,気管支鏡検査で右中間幹に粘膜不整を認め,同部の生検にて扁平上皮癌と診断された.同時性多発肺癌と判断し,左上葉切除および,右肺癌に対する放射線療法を計画した.左肺癌の術中,左上肺静脈が左腕頭静脈に流入する部分肺静脈還流異常を認め,この異常静脈を切離し,左肺上葉切除を行い腺癌(pT1N0M0 stage I A)と診断された.右肺癌に対しては術後に計60Gyの放射線治療を施行した.部分肺静脈還流異常は肺静脈の一部が左房ではなく,右心系へ還流する稀な先天奇形である.この症例は切除予定肺葉の還流異常であったが,切除肺葉以外に異常静脈が存在する場合,術後に右心不全を発症する可能性があるため,肺切除術に際し,念頭にいれておくべき疾患である.
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