抄録
ダブルルーメンチューブを使用し,左主気管支膜様部に損傷を生じた症例を経験したので報告する.患者は74歳女性.左肺腫瘍の診断・治療目的で左S6区域切除術を行った.気管内挿管には左用35Frダブルルーメンチューブを用いた.閉胸前の水封試験にて肺門部背側からの気漏を認め,左主気管支膜様部の縦走する3cmの損傷を発見した.ダブルルーメンチューブによる気管支損傷として縫合修復を行った.術後の気管支内視鏡検査では感染徴候や狭窄は認めず,経過は良好であった.ダブルルーメンチューブによる気管支損傷は稀ではあるが重篤な合併症であり,文献的考察を加えて報告する.