日本呼吸器外科学会雑誌
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25 巻, 2 号
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原著
  • 持永 浩史, 赤嶺 晋治, 村岡 昌司, 森野 茂行
    2011 年 25 巻 2 号 p. 134-139
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    近年,急性膿胸に対して,胸腔鏡下ドレナージ術の有用性が報告されているが手術適応に関しては明らかではない.そこで当院で治療した急性膿胸について,手術群(7例),ドレナージ群(6例),抗生剤治療群(9例)に分け,画像所見・ドレナージ期間・入院期間からその治療方針に関してretrospectiveに検討した.抗生剤治療群では,全例において胸部単純X線で胸水容積比率が1/4以下であった.CT所見で多房化した5例は全例手術を行った.ドレナージ期間では,手術群がドレナージ群よりも有意に短期間であった.入院期間ではドレナージ群が他の2群に比し有意に長期であった.胸部単純X線にて胸水容積比率が1/4以下の症例は,抗生剤による保存的適応の目安になると考える.CTで多房化を認める症例は手術適応があり,胸腔ドレナージを必要とする症例は治癒しても長期の入院となるため,手術を考慮することが望ましいと考える.
症例
  • 岡川 武日児, 宇佐美 範恭, 岡阪 敏樹, 川口 晃司, 鈴木 晴子, 横井 香平
    2011 年 25 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は35歳男性.検診の胸部X線写真にて異常を指摘され,他院を受診し胸部CTにて左肺門に約35mmの腫瘤が発見された.超音波気管支内視鏡下生検を施行するも悪性所見は得られず経過観察となっていたが,FDG-PETにて同部位に軽度集積を認め(SUVmax 2.63),悪性腫瘍も否定できないため当院に紹介された.Castleman病,肺カルチノイド,悪性リンパ腫,炎症性偽腫瘍などを疑い手術を施行した.術中迅速病理診断は,明らかな悪性所見を認めず,リンパ増殖性疾患と診断されたため,腫瘍切除術を施行した.最終病理診断はCastleman病であった.肺門部の孤立性腫瘤の鑑別は困難な場合が少なくないが,縦隔に次いで肺門リンパ節はCastleman病の好発部位であるため,当疾患も念頭に置く必要があると思われた.
  • 岡田 英, 廣野 達彦, 渡辺 健寛
    2011 年 25 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    71歳女性.2009年の検診で胸部異常影を指摘され前医を受診した.胸部CTで右S3の胸膜直下に1.8cm大の結節を認め,気管支鏡検査では細胞診,細菌培養ともに陰性であった.FDG-PETで同部位にSUV max 3.82の集積を認め肺癌が疑われたため,手術目的に当院に入院した.手術は術中細胞診で悪性所見を認めなかったため右上葉部分切除を施行した.切除組織の抗酸菌検査で直接塗抹陽性,Mycobacterium intracellulare PCR陽性となり非結核性抗酸菌症と診断した.本邦では孤立性肺結節として発見され,肺癌との鑑別が困難な非結核性抗酸菌症の報告が散見される.多くは手術で切除され組織の抗酸菌検査から確定診断に至っている.肺腫瘍性病変の良悪性の鑑別に有用といわれるFDG-PETは,活動性の炎症性疾患でも集積亢進することがあり,結果の判断には注意が必要である.
  • 宮原 尚文, 濱武 大輔, 宮原 聡, 濱中 和嘉子, 白石 武史, 岩崎 昭憲
    2011 年 25 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は18歳,男性.右下葉に限局した肺炎を繰り返していたため胸部CT検査を施行したところ,右下葉S8中枢側に20mm大の腫瘍性病変を認めた.気管支鏡検査では右底幹気管支B8-10入口部を閉塞する表面不整な腫瘍を認め,生検で肺粘表皮癌と診断された.画像的にリンパ節転移,遠隔転移を認めず手術適応と判断したため,右下葉切除術およびリンパ節郭清(ND2a)を施行した.術後の病理検査で低悪性度肺粘表皮癌,pT1N0M0 stage IAと診断された.低悪性度肺粘表皮癌では比較的若年発生の報告も多いが,20歳以下の発症は極めて稀と考えられる.本症例のように若年者であっても反復する肺炎を認める際には肺癌も念頭において診察にあたる必要があると考えられた.
  • 松下 晃三, 大井 諭, 伊藤 靖, 閨谷 洋, 高橋 毅, 清水 恵
    2011 年 25 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    52歳女性.左鎖骨上窩の腫瘤を主訴に当院外科を受診した.胸部CTで両側頚部,左鎖骨上窩,そして右後縦隔に約8cmの腫瘍を認めた.当初悪性腫瘍のリンパ節転移なども疑い,全身検索と腫瘍の質的診断を行った.FDG-PETでは両側頚部,左鎖骨上窩,右後縦隔,左後腹膜,左大腿部に集積を認め,各部位のCTおよびMRIによる質的診断では,全病変で神経鞘腫が疑われたため,右後縦隔腫瘍に対し,胸腔鏡補助下腫瘍摘出術を施行した.術中所見では右迷走神経の走行に一致して腫瘍を認めた.摘出標本の最終病理診断は迷走神経鞘腫であった.Café-au-lait-spotsはなく遺伝歴もないため,本症例の最終診断は,多発性神経鞘腫症と診断した.多発性神経鞘腫症で迷走神経鞘腫を合併することは稀である.FDG-PETは,全身の腫瘍部位を同定する検査方法として有効な手段であると考えられた.
  • 藤原 俊哉, 西川 敏雄, 片岡 和彦, 松浦 求樹
    2011 年 25 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    急性膿胸は早期に適切な抗生剤の投与と胸腔ドレナージを行えば保存的に治癒が見込まれるが,線維素が析出し胸膜肥厚により肺膨張不全を伴ってくると,慢性膿胸に進行する.われわれは急性膿胸に対して比較的早期に胸腔鏡下手術を行い治癒しえた5例を検討した.年齢中央値61±12.9歳,男性3例,女性2例であった.術前病悩期間は8.4±3.6日で,原因は肺炎4例,胸膜炎1例であった.手術は全例胸腔鏡下に肺剥皮術・ドレナージを行った.平均手術時間は131.8±14.6分,平均出血量54±42.9gであった.5例中2例で抜管直後に肺水腫を来たしたが,非侵襲的陽圧換気(NIPPV)により,速やかに改善した.ドレーン留置期間は平均5.2±2.2日で,術後在院日数は平均17.2±5.9日であった.全例胸腔鏡下手術は低侵襲であり,急性膿胸が慢性化するのを妨げるのに有用な治療法と考えられた.
  • 横田 俊也, 三窪 将史, 星野 竜広, 池田 晋悟, 羽田 圓城, 藤井 晶子
    2011 年 25 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    原発不明胸壁腺癌を経験した.症例は72歳女性.他院で右胸壁に7cm大の腫瘍を指摘,経皮生検で上皮系悪性腫瘍と診断され当院紹介となった.免疫染色の結果から肺腺癌の胸壁転移が疑われたが,全身精査でも原発巣は認められず,原発不明癌として切除術を行った.病理組織学的には低分化型腺癌の胸壁転移が疑われ,CK7(+),CK20(-),TTF-1(+)のパターンから肺腺癌の胸壁転移の可能性が示唆された.
  • 荒井 淳一, 山崎 直哉, 田川 努, 土谷 智史, 宮崎 拓郎, 永安 武
    2011 年 25 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.検診で胸部異常陰影を指摘された.CT・MRIにて前縦隔に最大径70mmの腫瘤を認め,胸壁・肺への浸潤が疑われた.また左下葉S6に15mmの結節影を認めた.前縦隔腫瘤のCTガイド下肺生検にてMesenchymal tumor,unclassifiedと診断され,手術を施行した.腫瘍は胸壁・左肺舌区に浸潤していたが,心膜とは剥離可能で,左横隔神経も温存し,腫瘍切除,胸壁合併切除(第3—6肋骨合併切除),胸腺部分切除,左舌区・S6部分切除を行った.病理組織では,紡錘形細胞が粗ないし密に増殖し,核分裂像を認め変性壊死を伴っていた.免疫染色ではvimentin・HBME-1陽性,S-100・AE1/AE3・EMA・calretinin・TLE1陰性.病理診断は悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor(以下MPNST))であった.術後18ヵ月再発は見られない.
  • 馬場 哲郎, 浦本 秀隆, 山田 壮亮, 竹之山 光広, 花桐 武志, 安元 公正
    2011 年 25 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    原発不明の縦隔リンパ節癌の3症例を経験した.症例1は68歳の男性.縦隔リンパ節腫大を認め,手術によってリンパ節癌と診断された.術後7年目に左上葉に肺腫瘤が出現し切除を行った.リンパ節癌と肺癌の組織型は同一であったため,肺転移と診断した.症例2は72歳の男性.嗄声の精査で大動脈下リンパ節の腫大を指摘された.同リンパ節の生検で,扁平上皮癌と診断され,放射線化学療法を行った.術後1年後に左肺転移が出現.術後2年5ヵ月において担癌生存中である.症例3は71歳の女性.右肺下葉の肺癌で肺切除および肺門縦隔リンパ節郭清を施行.病理組織で,肺腫瘍は扁平上皮癌であったがリンパ節に大細胞神経内分泌癌をみとめた.術後3年5ヵ月で非担癌生存中である.縦隔リンパ節腫大をみとめる症例では,原発巣が同定できなくても診断と治療をかねた外科的アプローチを検討する必要がある.
  • 松浦 陽介, 渡 正伸
    2011 年 25 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    降下性壊死性縦隔炎(DNM)は口腔や咽喉頭周囲に生じた感染が,気管支周囲の疎性結合組織に波及し,縦隔に下降して生じる縦隔炎で,救命のためには早期診断・治療が必須の疾患である.症例は59歳,女性.扁桃炎の加療中,心不全症状と不明熱が認められるようになった.この時点で初めて全身CTが施行され,DNMと診断された.胸腔鏡下に縦隔ドレナージおよび心膜開窓術を施行し救命し得た.術中所見では,抗生剤が奏効し縦隔炎はすでに沈静化していたが,心嚢内へ顕著な線維素の析出がみられ,急性線維素性心膜炎の状態となっており,心不全症状の原因と推測された.DNMでは早期診断が重要であるが,本症例のように診断が遅れても,抗生剤が奏効した場合は,急性線維素性心膜炎による心不全症状などの非特異的で多様な症状を呈する結果となる.今後は抗生剤が奏効したDNMでは,本症例のような臨床症状がみられることを考慮すべきである.
  • 張 吉天, 陳 豊史, 藤永 卓司, 板東 徹, 仁木 俊一郎, 伊達 洋至
    2011 年 25 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.原発性肺癌に対して,胸腔鏡下左上葉切除術を施行された.周術期に肺塞栓症予防対策を施行し,術後回復良好,16日目に退院した.同日に呼吸苦が出現したが我慢した.20日目に受診し,脱水症状や血液検査で軽度の炎症所見が存在した.しかし,補液などの対症的な治療によってすぐに呼吸困難を含めた全身状態の改善を認めた.原因究明のための精査をすすめたところ,術後26日目の胸部造影CT,下肢血管エコーにて肺塞栓症と深部静脈血栓症の確定診断が得られた.抗凝固治療とIVCフィルター留置を行った.3週間後に,肺血管内血栓は消失したが,下肢血栓の改善を認めず,IVCフィルター留置のまま退院となった.本症例においては,肺血栓塞栓症の診断に,はからずも入院後約1週間を要した.呼吸器外科術後に,呼吸苦などの非特異的な臨床所見を呈した場合,常に肺塞栓症を念頭に置き,より積極的に精査を行う必要があると考える.
  • 森 彰平, 秋葉 直志, 丸島 秀樹, 森川 利昭
    2011 年 25 巻 2 号 p. 194-197
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    胸壁腫瘍に対しGORE-TEX® Dual Meshを用いた胸壁再建を行った.症例は78歳,男性.右下位肋骨後方の胸壁腫瘍に対し腫瘍切除を施行,胸壁欠損は10×11cmであり,欠損部にDual Meshを縫着固定し胸壁再建を行った.術後,奇異呼吸は認めず呼吸機能は良好に保たれた.GORE-TEX® Dual Meshは胸壁再建で用いられる有用な人工材料であることが示唆された.
  • 小川 裕行, 田中 雄悟, 若原 鉄平, 田内 俊輔, 内野 和哉, 吉村 雅裕
    2011 年 25 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され,縦隔腫瘍が疑われたため精査加療目的にて当センターに紹介となった.胸部CTでは上縦隔に59×31×28mm大の境界明瞭で辺縁優位に造影される長楕円形の腫瘍を認めた.PET-CT検査では同部位にFDGの集積(SUVmax 7.34)を認め,上縦隔腫瘍(非浸潤性胸腺腫疑い)の診断で手術を行った.腫瘍は左肺上葉と左横隔神経に一部浸潤していたが,合併切除により完全切除された.病理組織診の結果,腫瘍は胸腺発生の大細胞神経内分泌癌(LCNEC),正岡分類stage IIIと診断された.術後,縦隔への放射線照射(50Gy/25Fr)を行い,現在術後6ヵ月経過しているが無再発生存中である.胸腺発生の大細胞神経内分泌癌は極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を含め報告する.
  • 傍島 卓也, 伊藤 正夫
    2011 年 25 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    ダブルルーメンチューブを使用し,左主気管支膜様部に損傷を生じた症例を経験したので報告する.患者は74歳女性.左肺腫瘍の診断・治療目的で左S6区域切除術を行った.気管内挿管には左用35Frダブルルーメンチューブを用いた.閉胸前の水封試験にて肺門部背側からの気漏を認め,左主気管支膜様部の縦走する3cmの損傷を発見した.ダブルルーメンチューブによる気管支損傷として縫合修復を行った.術後の気管支内視鏡検査では感染徴候や狭窄は認めず,経過は良好であった.ダブルルーメンチューブによる気管支損傷は稀ではあるが重篤な合併症であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 日野 佑美, 三村 剛史, 向田 秀則, 多幾山 渉, 山下 芳典
    2011 年 25 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    胸部CTでBubble-like appearance(以下BLA)を呈し,長期間経過観察された後,切除した肺多形癌の一例を経験したので報告する.症例は73歳女性.検診の胸部X線で左上肺野に淡い浸潤影を指摘され,胸部CT上炎症性変化として近医で約4年間経過観察された.CTで増大傾向が認められ当院に紹介となった.胸部CT上,陰影は左肺上葉に最大径60mm大のBLAを呈していた.術前の気管支鏡検査および術中針生検でも明らかな悪性所見は認めなかったが,徐々に増大するBLA陰影で腫瘍マーカーも高値であることから,原発性肺癌を疑い左肺上葉切除を施行した.最終病理診断では肺多形癌(pT2bN0M0 Stage II A)であった.BLAを認めた際には,陳旧性炎症との鑑別が困難なこともあるが,肺癌も念頭に置きながら,精査ならびに観察を行う必要がある.
  • 五十嵐 知之, 花岡 淳, 井上 修平, 大内 政嗣, 尾崎 良智, 手塚 則明
    2011 年 25 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.9ヵ月前より徐々に増悪する咳嗽を放置していたが,健康診断で胸部異常陰影を指摘され受診した.胸部CTで左上葉から前縦隔に連続する腫瘤影が認められ,気管支鏡検査を施行したが確定診断には至らなかった.当科紹介後に再度気管支鏡検査所見を確認したところ,左B3よりポリープ状に突出する白髪を伴った腫瘤を認め,肺穿破を合併した縦隔奇形腫を疑った.左経胸腔アプローチで左肺上葉部分切除術および縦隔腫瘍摘出術を施行,術後病理検査で確定診断を得た.術後経過は良好で現在も再発を認めていない.本症例は肺穿破合併後に腫瘍実質成分が気管支内腔へ侵入し発育する興味ある進展形式を示した縦隔成熟型奇形腫症例であった.
  • 馬場 哲郎, 浦本 秀隆, 岡 壮一, 竹之山 光広, 花桐 武志, 安元 公正
    2011 年 25 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.肺転移と肝転移を伴う進行大腸癌に対して化学療法を行っている際に,労作時の呼吸困難を認め当科紹介となった.気管支鏡検査において,左主気管支にポリープ状の腫瘍を認め,左主気管支は殆ど閉塞していた.生検にて大腸癌の転移性腫瘍と診断した.気道狭窄症状を認めたために,気管支鏡下にNd-YAGレーザーおよび高周波スネアにて腫瘍切除した.合併症はなく,左主気管支の狭窄と自覚症状は著明に改善した.大腸癌の気管支転移は非常に稀であるが,転移検索時には念頭におく必要があり,他に転移巣が存在し,根治が不能と判断した場合においても,気道確保目的の気管支鏡下治療は有効性が高い.
  • 上田 雄一郎, 大政 貢, 志熊 啓, 豊 洋次郎, 瀧 俊彦
    2011 年 25 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    Lymphoid hyperplasiaが肺MALTomaの先行病変と考えられた症例を経験したので報告する.症例は62歳女性.シェーグレン症候群の既往あり.乳癌術後のfollow up CTにて右中葉にGGOを認め,胸腔鏡下右中葉部分切除術を施行したところ,病理組織診断はlymphoid hyperplasiaであった.その後再び外来にてフォローしていたが,2年後に右下葉に肺癌を疑う多発GGOを認めた.胸腔鏡下右下葉部分切除術を施行したところ病理組織診断はlow grade B-cell lymphoma of MALT typeであった.右下葉部分切除後の残存陰影に対し,リツキシマブを投与したところ陰影は消失した.現在再燃なく経過観察中である.以上よりLymphoid hyperplasiaが肺MALTomaの先行病変となる可能性があり,慎重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 坪井 光弘, 吉澤 潔, 環 正文, 三浦 一真
    2011 年 25 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 2011/03/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    肺類上皮血管内皮腫(PEH)は稀な肺腫瘍の1つであり,かつて血管内細気管支肺胞上皮腫瘍と呼称されていた疾患である.PEHの多くは,画像上境界明瞭な多発小結節陰影を示すとされているが,今回我々は原発性肺癌と類似する画像所見を呈したPEH症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は78歳,女性.咳嗽を主訴に近医を受診した.胸部CTで左S1+2に石灰化を伴う境界明瞭な15mm大の腫瘤影,右S9末梢に10mm大の境界不鮮明で胸膜陥入を伴う結節影を指摘された.FDG-PET検査で右下葉の結節にのみ強い集積を認め,原発性肺癌の疑いで胸腔鏡下肺部分切除を行った.術中迅速病理検査でPEHと診断され,手術を終了した.肺類上皮血管内皮腫は様々な陰影をとり得る可能性があり,両肺に多発結節陰影を認めた際は鑑別診断に上げる必要があると思われた.
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