抄録
胸部CTでBubble-like appearance(以下BLA)を呈し,長期間経過観察された後,切除した肺多形癌の一例を経験したので報告する.症例は73歳女性.検診の胸部X線で左上肺野に淡い浸潤影を指摘され,胸部CT上炎症性変化として近医で約4年間経過観察された.CTで増大傾向が認められ当院に紹介となった.胸部CT上,陰影は左肺上葉に最大径60mm大のBLAを呈していた.術前の気管支鏡検査および術中針生検でも明らかな悪性所見は認めなかったが,徐々に増大するBLA陰影で腫瘍マーカーも高値であることから,原発性肺癌を疑い左肺上葉切除を施行した.最終病理診断では肺多形癌(pT2bN0M0 Stage II A)であった.BLAを認めた際には,陳旧性炎症との鑑別が困難なこともあるが,肺癌も念頭に置きながら,精査ならびに観察を行う必要がある.