抄録
症例は37歳,女性.腰痛を主訴に近医を受診.腰椎X線検査にて偶然,下肺野に腫瘤影を認めたため,当院呼吸器外科に紹介された.胸部X線写真で左下肺野に約9 cmの境界明瞭円形の腫瘤陰影を認め,胸部CTおよびMRIにて第9椎間孔から椎体を破壊し脊柱管内に伸展する,ダンベル型の腫瘍を認めた.腫瘍は脊髄硬膜内には伸展しておらず,中枢に近い肋間神経から発生した神経鞘腫と考えられた.手術は一期的にまず後方より神経根を処理した後,体位変換し前方アプローチとしては10 cmの第5肋骨床開胸,胸腔鏡併用で開始した.しかし腫瘍径が大きく,腫瘍の強度の広範癒着のため胸腔内操作に難渋し,胸腔内操作にもう一ヵ所の開胸創を要した.術後経過良好で,腰痛は軽快した.ダンベル型腫瘍に対する胸腔鏡補助下の後方+前方アプローチは美容や安全性の面から導入すべき手技であるが,胸腔鏡の役割は補助的な使用にとどめるべきであると考える.