抄録
症例は50歳,女性.咳嗽と呼吸困難を主訴に近医を受診し,肺炎と診断され加療を行うが軽快しないため当院に紹介された.胸部単純X線写真及び胸部CT上,左下葉に径7 cm大の腫瘤影と左下葉の無気肺を,さらに左気管支の腫瘍による狭窄像,肺門縦隔リンパ節の腫大と胸水を伴っていた.気管支鏡検査では左下葉支入口部直下に灰白色の不整な隆起性病変を認め,生検の病理組織検査では悪性黒色腫であった.全身検索にて,頭頂部皮膚面に径6 mmの皮下結節を認めたが,病理組織検査では悪性黒色腫の皮膚転移であった.本症例の肺病変は径7 cm大の塊状影であり,他に原発部位を認めなかったため,肺原発性悪性黒色腫と診断した.根治手術の適応ではなかったが,対症療法として左下葉切除術を行い,術後には化学療法と放射線療法を行った.現在初診時より3年以上が経過し,転移は認めるものの生存中であり,集学的治療の効果と考えられる.