抄録
当科では完全胸腔鏡下手術時に硬膜外麻酔を行っていないが,2011年12月からは閉胸前肋間神経ブロックを行っている.肋間神経ブロック開始前の6ヵ月間と開始後の6ヵ月間の患者を対象とし,VASを用いて術後疼痛を評価した.全症例数は63例(男38)で,平均年齢は68.5歳.疾患は原発性肺癌が46例で,葉切または区切が50例であった.ブロック施行群(39例)と未施行群(24例)との間で,背景因子に差はなかった.VASスコアは,術後5日目までのどの時点でも両群間に差はなかった.しかし術当日の病棟での鎮痛剤使用症例は,ブロック施行群の方が少なかった(p=0.01).術後6時間の時点でのVASスコアに影響した因子は,術後ドレーン留置の有無のみであった.肋間神経ブロックは安全で簡便な鎮痛法として選択しうる方法であるが,その有用性をVASで示すことはできなかった.さらなる工夫を加え,有用性を示す必要がある.