抄録
【目的】終末期の患者にとって食事は,QOL向上の面からも重要な要素の一つであると考える.一方,緩和ケア病棟では,在院日数が短いことや病状の変化が著しいなどから,入院患者の食事に関する報告はほとんどみられない.今回我々は,独立型緩和ケア病棟(以下S病院)の患者を対象に,病院内の各職種と連携して患者に適した調理形態の食事を立案し,実際に患者に提供することを試みた.予備調査から他の食事に比較して,パスタ食提供時の残食が多いとの結果を得た.この結果からパスタを主食とした食事に注目し,調理方法および提供方法を検討した.
【方法】予備調査:S病院の入院患者17名を対象に嗜好,喫食量,現在の調理形態について調査を行った.本実験:予備調査結果から対象者を4名とし,調理形態を変更する食事をパスタとした.パスタは,マ・マー社製のロングスパゲティとサラダスパゲティショートを用いた.調理形態は長さ(25.0cm,12.5cm, 8.3cm,6.3cm,ショートパスタ4~5cm),盛り付け量(70g,60g,40g),柔らかさ(湯で時間7分,9分)とした.調理手順は,茹でてから切る方法と茹でる前に乾麺を折る方法の2種とした.パスタの硬は,破断強度試験(山電_(株)_レオメータ)を行った.食べ易さの評価は、パスタの調理形態ごとに、提供時の麺の状態の写真撮影を行い比較した.献立は一ヶ月前の献立を元にし,味付けや栄養量がほぼ同等になるように立案した.対象者の喫食量と満足度を調査票に記録し,前回の提供時の記録と比較して評価した.対象者の選出や実施時期,調理形態の決定にあたっては,医師,看護師,管理栄養士,調理師を含めた6種の職種で検討した.
【結果】調理形態を変更により,対象者4名中3名の喫食量が増加した.食べやすさの要因としては,パスタの長さと柔らかさが挙げられた.調理手順の変更では,茹でる前に乾麺を折る方法が煩雑な調理作業の時間を短縮し調理員に好評であった.他職種の意識調査では97.0%の職員が今回の取り組みの必要性を感じると回答した.