抄録
原発性悪性心膜中皮腫(MPerM)に対して化学療法を行った2例を経験したので報告した.症例1は61歳,女性.主訴は労作時呼吸困難.胸腔鏡下心膜生検にてMPerMの診断となる.び慢性病変であり手術適応がないと考え,Pemetrexed(Pem)+carboplatin(CBDCA)による化学療法を開始し,2コース後には心膜肥厚は改善した.しかし,6コース後に増悪し救済化学療法としてirinotecan hydrochlorideを投与したが,発症から18ヵ月後に腫瘍死した.症例2は77歳,男性.主訴は労作時呼吸困難.心嚢液の細胞診と画像所見より胸腔鏡下生検は施行せずMPerMと診断した.び慢性病変のためPem+CBDCAを開始し,6コース投与後に腫瘍は消失した.維持化学療法としてPemを投与したが再発し,15ヵ月後に腫瘍死した.非切除MPerMに対する化学療法は有用な治療法の1つと考えられた.