日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
VAC療法により胸骨正中切開創の再開創を回避できた胸腺腫術後縦隔炎の一例
木村 賢司亀山 耕太郎中島 尊奥村 典仁松岡 智章高橋 鮎子
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2016 年 30 巻 5 号 p. 545-549

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抄録

症例は65歳,女性.検診の胸部X線で胸部異常影を指摘された.胸部CTで前縦隔に4 cm大の腫瘤を認め,PET/CTでFDG軽度集積を認め胸腺腫を疑った.胸骨正中切開拡大胸腺胸腺腫瘍摘出術を施行し胸腺腫(Type B1)と診断された.術翌日にドレーン抜去,その後の経過は良好であったが,術後4日目に胸骨正中切開創の頭側頚部に発赤・疼痛を伴う腫脹を認めた.炎症反応上昇と共に穿刺液の細菌検査でG(+)coccusを検出した.胸部CTで頚部腫脹部と胸骨裏面は連続しており術後縦隔炎と診断した.腫脹部に10 mmの横切開を置き開放ドレナージを行い,同部よりVAC療法(持続陰圧療法)を行った.炎症反応改善,細菌検査陰性を確認し,治療開始14日目でVAC療法を終了した.横切開は自然閉鎖し,術後26日目に退院した.小開胸創から行ったVAC療法が奏効し胸骨正中切開創の再開創を回避できた術後縦隔炎の一例と思われた.

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