日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
胸腺腫に合併し拡大胸腺摘出術後に神経症状が改善した傍腫瘍性神経症候群の1例
山本 恭通戸矢崎 利也小阪 真二
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2017 年 31 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

症例は63歳女性.左上下肢ミオクローヌスと歩行障害で緊急入院となった.頭部MRI上大脳皮質と皮質下に10日間で拡大するびまん性のT2高信号域を認めた.胸部CTで胸腺腫を疑う腫瘤影を認め,抗アセチルコリン受容体抗体が高値を示した.ステロイドパルス療法後に漸減療法を行ったが,失語,筋力低下,痴呆症状など神経症状と脳機能低下は急速に進行した.寝たきりとなり下肢静脈血栓症を併発した.傍腫瘍性神経症候群と診断し入院31日後に拡大胸腺摘出術を行った.胸腺腫Type ABでWHO分類pT1N0M0 I期,正岡分類I期であった.術後神経症状や脳機能低下は劇的に改善し術後32日に独歩退院した.

比較的急速に進行する傍腫瘍性神経症候群は胸腺腫などの腫瘍と神経組織に共通する抗原に対する自己免疫が原因といわれ,悪化する神経精神症状に躊躇することなく胸腺腫に対する早期の外科治療が必要である.

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