2017 年 31 巻 1 号 p. 69-75
非セミノーマ胚細胞性腫瘍の進行例において,化学療法によって腫瘍マーカーの値は正常化したにも関わらず,病変が増大傾向を示したもののうち,切除標本の病理組織学的検索で成熟奇形腫のみより構成されていると診断されたものをGrowing teratoma syndrome(GTS)と呼んでいる.今回我々は,完全切除し,GTSと診断した症例において,術後1年4ヵ月に胸壁に再発をきたした症例を経験した.手術により腫瘍を切除したところ病理組織学的に紡錘細胞を伴った肉腫を認め,前回切除標本で認めた筋線維芽細胞腫症の悪性転化と考えられた.GTSは組織学的には良性疾患であり,手術での完全切除により良好な予後を得ることができるが,悪性転化による再発を起こす可能性もあり注意を要する.縦隔原発のGTSは極めて稀であり,文献的考察を含め報告する.