日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
顆粒球コロニー刺激因子の発現を認めた限局性悪性胸膜中皮腫の1切除例
門松 由佳川角 佑太上野 陽史内山 美佳森 正一
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2017 年 31 巻 5 号 p. 689-696

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抄録

顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)の発現を認める限局性悪性胸膜中皮腫の1例を経験した.症例は75歳男性で,発熱と胸部違和感のため当院を受診した.胸部CTで肋骨に接する単発性の腫瘤を認めた.血液検査上,炎症反応上昇と発熱を認めたため手術まで抗生剤治療を継続した.術中針生検による迅速病理診断でも確定診断は得られず,左上葉切除と第1・2肋骨合併切除を施行した.免疫組織化学検査で肉腫型の限局性悪性胸膜中皮腫であり,一部の腫瘍細胞は抗G-CSF抗体陽性であった.術後化学療法は施行せず,20ヵ月が経過するが,再発なく生存している.限局性胸膜中皮腫は術中診断が困難な疾患であり,可能なかぎり術前の組織診断が望ましいこと,経過中に原因の特定できない炎症反応上昇を認めた場合はG-CSF産生腫瘍の可能性を検討する必要がある.

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