日本呼吸器外科学会雑誌
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31 巻, 5 号
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巻頭言
原著
  • 中村 徹, 清水 恵, 船井 和仁
    2017 年 31 巻 5 号 p. 568-572
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    フィブリン糊は肺瘻修復に最も汎用され,ポリグリコール酸(PGA)と併用されることも多いがPGAを単独で貼付する報告は少ない.我々は2001年1月から2012年12月までに肺葉切除を施行した症例を調査し,PGA単独貼付の治療成績を明らかにした.199例でフィブリン糊を用いずにPGAを使用していた.PGA不使用の389例と比較して術後ドレーン留置期間は有意に長かった(4.37日vs. 3.08日,p<0.05).PGA使用の肺瘻治療目的群では閉塞性肺障害症例で留置期間が長い傾向にあり,遷延する肺瘻は有意に多く(34% vs. 16.2%,p=0.01),閉塞性肺障害症例においてはPGA単独使用は不十分でフィブリン糊の併用が望ましい.一方肺瘻予防目的群での術後ドレーン留置期間は平均2.9日であり,肺瘻予防目的ではPGA単独貼付はオプションとなりうる可能性が示唆された.

  • 小松 弘明, 泉 信博, 月岡 卓馬, 岡田 諭志, 戸田 道仁, 原 幹太朗, 伊藤 龍一, 西山 典利
    2017 年 31 巻 5 号 p. 573-578
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    今回我々は肺腺癌と食道扁平上皮癌の同時性重複癌の9例を対象とし,術後合併症と予後について検討した.年齢中央値67歳,男性6例,女性3例.術式は右肺と食道の同時手術が5例,二期的手術が4例であった.肺癌切除術式は肺葉切除5例,区域切除4例.全例で完全切除を行い,術後在院死は認めなかった.同時手術例では2例(40%)に周術期合併症を認め,右下葉切除例が誤嚥性肺炎,胸骨後再建胃管の縫合不全,乳糜胸,気管支断端瘻および膿胸を併発した.S6区域切除例で肺炎およびARDSを併発し,気管支瘻をきたした.一方,二期的手術を行った4症例では,重篤な合併症は認めなかった.全生存期間における3年生存率は76.2%,生存期間中央値は67.1ヵ月であり,食道・肺ともに完全切除可能であれば,手術加療を考慮すべきと考えられた.また,右肺癌重複例で同時手術を行う際は,肺合併症と消化管縫合不全の同時併発に留意すべきである.

  • 三村 剛史, 原田 洋明, 山下 芳典
    2017 年 31 巻 5 号 p. 579-585
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    完全胸腔鏡下肺切除手術は現在広く実施されているが,二次元映像による空間認識能力低下が欠点として挙げられる.それを解消しうる3D内視鏡システムが近年開発された.我々は2015年以降,腫瘍径30 mm以下(cN0)の原発性肺癌に対する完全胸腔鏡下肺葉切除術に本システムを採用している.本研究では本システム導入前の2D内視鏡使用症例と比較し,その有用性を検討した.3D内視鏡による群(3D群;n=34)と,2D内視鏡による群(2D群;n=73)において,手術時間は3D群で有意に短く(3D群202分,2D群224分,p=0.029),出血量も有意に少なかった(3D群30 g,2D群60 g,p=0.002).3D内視鏡システムによる完全胸腔鏡下肺葉切除術は,従来の2D内視鏡システムに比して,より短時間で安全に手術が実施可能と考えられるが,その普及のために検討を要すると思われる.

  • 親松 裕典, 鈴木 晴子, 大畑 賀央, 成田 久仁夫
    2017 年 31 巻 5 号 p. 586-592
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    目的)開胸術後鎮痛において,アセトアミノフェン定時点滴注入(点注)併用フェンタニル持続静脈内注射(静注)が硬膜外麻酔を代替する可能性を探求した.

    方法)アセトアミノフェン定時点注併用フェンタニル持続静注群(AF群)と硬膜外麻酔群(Epi群)の2群に分類し,後方視的に比較検討した.

    結果)患者数はAF群が19例,Epi群が25例であった.術後鎮痛効果は第1病日の咳嗽時のみでAF群が劣っていたが,それ以外では両群間に有意差を認めなかった.離床の遅れに差はなかったが,Epi群でリハビリ時の血圧低下が,AF群で悪心嘔吐が多く,それぞれの要因でリハビリに若干の支障を生じた症例があった.

    結論)アセトアミノフェン定時点注併用フェンタニル持続静注は,悪心嘔吐や咳嗽時の疼痛に対策する余地があるが,比較的良好な鎮痛効果があり,硬膜外麻酔の合併症を回避できる等の利点もあるため,開胸術後鎮痛法の一選択肢となり得る.

症例
  • 谷口 聖治, 大瀬 尚子, 須﨑 剛行, 小堀 優子, 竹内 幸康
    2017 年 31 巻 5 号 p. 593-597
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    肺の孤立性毛細血管腫は,毛細血管内皮細胞の単純な増殖からなる良性腫瘍であり,予後良好な疾患とされている.また,胸部CT上スリガラス陰影を伴う結節影として描出されることがあるため,高分化型の肺腺癌との鑑別が難しい.症例は42歳女性.胸部CTで右S9区域にスリガラス陰影を伴う13 mm大の結節影を認め,高分化型肺腺癌を疑い胸腔鏡下底区域切除術を施行した.術後病理組織診断は孤立性肺毛細血管腫であった.細胞密度の高低により,中心部充実性と周囲スリガラス陰影となって抽出されていた.

  • 宮内 俊策, 牧 佑歩, 上野 剛, 杉本 龍士郎, 山下 素弘, 高畑 浩之
    2017 年 31 巻 5 号 p. 598-603
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    CT上,肺切除後のステープルラインにconsolidationを認める症例はしばしば経験する.今回,肺癌術後のステープルラインに増大する結節影を認め,切除を行った症例を経験したので報告する.症例1は77歳,男性.66歳時に右中葉,下葉肺癌に対して右中葉切除術,下葉部分切除術施行し,pStage IAの腺癌であった.経過観察中に右下葉S6のステープル近傍に結節影が出現し,経過のCTで増大傾向を認めたため右開胸S6区域切除術施行し,術後病理診断では炎症性変化の診断であった.症例2は66歳,男性.62歳時に左上葉肺癌に対して左上区域切除術施行し,pStage IAの腺癌であった.経過観察中に左肺門部に結節影が出現したため残存舌区域切除術施行し,術後病理診断では非結核性抗酸菌症の診断であった.本症例のような病態はステープル使用に伴う合併症として認識すべきである.

  • 本間 崇浩, 嶋田 喜文, 北村 直也, 山本 優, 尾嶋 紀洋, 芳村 直樹
    2017 年 31 巻 5 号 p. 604-609
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    幼児以下の小児は分離肺換気が困難であることから,鏡視下手術は広く普及していない.今回我々は肺動静脈瘻を有する4歳児平均相当の体格をした7歳女児に対して,完全胸腔鏡下肺葉切除術を安全に施行し得た.分離肺換気に際して,気管挿管前に気管支ブロッカーを留置する麻酔管理を行った.気管支ブロッカーがチューブ外にあるため,気管チューブが細くても気管支鏡操作と気管支ブロッカーとが干渉せず,良好な位置を保持し得た.気管支ブロッカー留置の工夫が,良好な分離肺換気とworking spaceの確保を可能とし,小児における安全な完全胸腔鏡下肺葉切除術の実施に有用と考えられた.

  • 梶浦 耕一郎, 滝沢 宏光, 近藤 和也, 鳥羽 博明, 川上 行奎, 丹黒 章
    2017 年 31 巻 5 号 p. 610-615
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は62歳男性.右肺扁平上皮癌にて術前放射線化学療法後に胸腔鏡補助下右肺全摘術(ND2a-2)を施行した.ポータブル型胸腔ドレナージ装置であるThopaz(トパーズ)にblakeドレーンをつなげて術後胸腔内ドレナージした.術後,咳嗽が多く認められ,皮下気腫が増加した.トパーズのエアリーク表示量はほぼ0 ml/分であった.気管支鏡で気管支断端瘻がないことを確認した.トパーズのドレナージトラブルと判断し,ドレーン抜去すると皮下気腫は軽快した.トパーズには胸腔内圧調節機能があり,胸腔内が過陰圧になるとバルブが開き空気を吸い込ませる機能がある.本症例では咳嗽による急激な胸腔内圧上昇時に胸腔内の空気が皮下に漏れ,その結果起こった胸腔内圧の低下を感知したトパーズ経由で胸腔内へ空気が流入するという機序を繰り返したと考えられた.

  • 大月 康弘, 栢分 秀直, 松岡 智章, 奥村 典仁
    2017 年 31 巻 5 号 p. 616-620
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    コントロール困難な胸水貯留に対して胸腔腹腔シャント造設により良好な経過を得た症例報告が散見される.今回我々は両側の難治性漏出性胸水に対して,片側の胸腔腹腔シャント造設により良好なコントロールを得た症例を経験した.症例は79歳男性.当科にて肺癌に対して左上葉切除施行.術後9ヵ月後心不全の増悪,腎機能低下にて他院入院.頻回の胸腔穿刺を要する右優位の難治性両側胸水貯溜を認め,当院へ転院となった.透析を導入し内科的加療を行うも胸水貯溜が進行するため胸腔腹腔シャント造設の方針とした.局所麻酔下に右側の胸腔腹腔シャントを留置した.術後特に合併症を認めず,1日1.5 L程度の胸水を,胸腔腹腔シャントを通して腹腔内に排出し,両側胸水の貯留は減少し,呼吸困難は改善した.全身の浮腫も改善し在宅酸素療法を導入して近医に軽快転院した.両側の難治性胸水貯留に対して胸腔腹腔シャントは有用である可能性が示唆された.

  • 大内 政嗣, 井上 修平, 尾崎 良智, 上田 桂子, 藤田 琢也
    2017 年 31 巻 5 号 p. 621-627
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は83歳,男性.食欲低下と体重減少の精査のため当院へ紹介となった.胸部CTで両側胸水と心囊液を認め,心臓超音波検査では心囊液による左室の拡張障害を認めた.第9病日に心タンポナーデを呈し,心囊ドレナージ術を施行した.心囊液のPCR検査で結核菌陽性であり,結核性心膜炎,両側結核性胸膜炎と診断,抗結核薬を開始した.排液量が多く,第20病日に全身・硬膜外麻酔下に左胸腔鏡下心膜開窓術を施行した.著明に肥厚した壁側心外膜と浮腫状の臓側心外膜との間の線維素状癒着を剥離したのちに壁側心外膜を4×3 cm切除した.被包化した心囊液による拡張障害が残存したため,多数の心膜切開を行った.術後はステロイド剤を追加し,心囊液の再貯留は認めず,壁側心外膜の肥厚も消失した.胸腔鏡下心膜開窓術は安全かつ確実な心囊液の排除と組織の採取に有用であり,ステロイド剤を併用することで収縮性心膜炎への移行を予防できる可能性がある.

  • 福井 崇将, 住友 亮太, 大竹 洋介, 黄 政龍
    2017 年 31 巻 5 号 p. 628-632
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は20歳男性.前日からの左胸痛と発熱を主訴に来院した.血液検査で白血球数31700/μl,CRP 22.52 mg/dlと著明な炎症反応の上昇を認めた.胸部CTでは前縦隔に8×7×6 cm大の腫瘤性病変と左胸水を認めた.病巣は多房性で一部充実性成分がみられた.AFPやCEAなどの腫瘍マーカーは陰性であった.縦隔腫瘍の穿破または縦隔膿瘍などを疑った.メロペネムを投与し,入院2日目に胸腔鏡検査を施行した.術中迅速病理検査では異型のある細胞がみられたが,確定診断に至らなかった.抗生剤投与で経過を観察したところ炎症反応の改善と縦隔腫瘍の縮小を認めた.以上の臨床経過から穿破を伴った成熟奇形腫と考え,待機的に胸腺胸腺腫瘍摘出術を施行した.病理診断では表皮と粘膜組織,膵組織,脂肪組織,軟骨等を認め,未熟な部分はなく成熟奇形腫と診断された.

  • 松井 琢真, 本野 望, 町田 雄一郎, 薄田 勝男, 浦本 秀隆
    2017 年 31 巻 5 号 p. 633-637
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    43歳,女性.咳嗽を契機に左肺上葉に結節影を指摘された.気管支鏡検査にて悪性所見を認めず,患者の希望もあり経過観察されていた.しかし,徐々に増大を認め,悪性疾患の可能性を否定できず,診断及び治療目的に手術を施行した.病理所見では不整な核をもつ類円形から紡錘形細胞が索状から充実性に増殖し,核分裂像を5/10高倍視野に認めた.免疫染色では上皮マーカーおよび筋系マーカーが陽性であり,肺原発筋上皮癌と診断された.肺原発の筋上皮癌は極めて稀であり,報告する.

  • 宮本 直輝, 河北 直也, 澤田 徹, 鳥羽 博明, 吉田 光輝, 滝沢 宏光
    2017 年 31 巻 5 号 p. 638-642
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は36歳女性.3年前より近医の検診で縦隔腫瘤が疑われ,経過観察を行っていた.継時的に増大傾向を示し,精査加療目的に当院受診となった.胸部CTで左中縦隔に36 mmの腫瘤影を認め,FDG-PET/CTにて同部位にSUVmax 4.93の集積を認めた.胸腺腫などの縦隔腫瘍を疑い胸腔鏡下手術を施行したが,病変は広基性な肺内腫瘍であった.迅速病理にて低悪性度腫瘍の結果であり左肺上大区切除を行った.術後の病理結果より良性血管周囲類上皮細胞腫瘍(benign perivascular epithelioid cell tumor:PEComa)と診断した.PEComaはまれな疾患であり,PET/CTを使用した報告は極めて少ない.FDGの集積亢進を認めた良性PEComaの1例を報告する.

  • 熊田 早希子, 松岡 勝成, 松岡 隆久, 長井 信二郎, 植田 充宏, 宮本 好博
    2017 年 31 巻 5 号 p. 643-647
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    外骨腫は小児期に孤発性あるいは遺伝性多発性に生じる良性骨腫瘍で,大腿骨や脛骨,上腕骨などの長幹骨に発生することが多いとされる.肋骨外骨腫は稀ではあるが,気胸や血胸,心膜・横隔膜損傷等の胸腔内合併症を引き起こすことがある.肋骨外骨腫に伴う気胸の報告は,欧米と日本での報告を合わせてもわずか8例に過ぎない.今回,13歳女性で左第5肋骨の肋骨外骨腫によって気胸をきたした1例を経験した.胸腔鏡下に肺瘻修復のための肺部分切除と肋骨外骨腫切除を施行した.

  • 飯島 慶仁, 木下 裕康, 中島 由貴, 秋山 博彦, 浦本 秀隆, 平田 知己
    2017 年 31 巻 5 号 p. 648-652
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    前立腺癌の肺転移は血清PSA高値を伴い多発することが多く,血清PSA正常値で肺以外に転移巣を認めない前立腺癌は稀である.症例は71歳男性.59歳で前立腺癌の手術歴があり,68歳の検診で胸部異常陰影を指摘され,経過観察中であった.結節影が増大傾向を示し,手術目的に当科紹介となった.Pro-GRP 70.0 pg/mL,NSE 29.0 pg/mLと上昇していた.血清PSAは正常範囲内であった.右上葉肺癌疑いcT1bN0M0,Stage IAの診断で,胸腔鏡下右肺部分切除術を施行した.術中迅速診断で腺癌の診断を得たため胸腔鏡下右上葉切除術,ND2a-2リンパ節郭清術を施行した.組織学的には癒合する腺管を形成しながら増殖する高円柱状細胞からなる腫瘍で,免疫組織学染色でPSA陽性であり,前立腺癌の単発性結節性肺転移と診断した.術後2年3ヵ月無再発生存中である.

  • 藤井 祥貴, 西田 達, 三上 厳, 若狭 研一
    2017 年 31 巻 5 号 p. 653-657
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    CTガイド下生検による肺癌の穿刺経路部再発は稀であるが,予後を左右する重大な合併症である.症例は66歳,男性.左肺S3aの腫瘤影に対しCTガイド下生検が行われ,左肺癌の診断のもと完全鏡視下左上葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後病理所見は腺扁平上皮癌でpStage IBであった.術後4ヵ月の胸部CTで左大・小胸筋内に直径10 cm大の腫瘤を認めた.経皮針生検でclass Vと診断されたが,組織型は不明のため,診断と治療目的に,第2・3肋骨切除を含む左胸壁腫瘍摘出および胸壁再建を施行した.病理所見は腺扁平上皮癌であり,画像上も生検針の通過部位は一致していること,肺癌術後1年7ヵ月で胸壁以外の部位に再発を認めないことから,生検針による穿刺経路部再発と診断した.CTガイド下生検による穿刺経路部再発は稀であるが,回避すべき重大な合併症であることを念頭に置き,適応を十分に検討するべきと考える.

  • 今村 史人, 間瀬 憲多朗
    2017 年 31 巻 5 号 p. 658-661
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    68歳女性.67歳時に左肺腺癌に対し,左肺上葉切除術,縦隔リンパ節郭清を施行した.術後病期はpT3N0M0,stageIIBと診断した.術後6ヵ月にCEA,SLXの上昇とCTで左腋窩リンパ節の腫大およびPETで同部位への異常集積を認めた.腋窩リンパ節生検を施行し,病理学的に肺癌腋窩リンパ節再発と診断された.化学療法および放射線治療を施行したが,腋窩リンパ節再発後1年7ヵ月で他部位への転移が出現し,腋窩リンパ節再発から約4年で癌死した.

  • 喜田 裕介, 中野 淳, 中島 成泰, 垂水 晋太郎, 呉 哲彦, 横見瀬 裕保
    2017 年 31 巻 5 号 p. 662-666
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    今回,同時に4ヵ所の病変を有する多発肺癌に対して2期的に手術を行った症例を経験したので報告する.症例は79歳男性,他疾患で撮影したCTで右上葉に40 mm大のGGOを指摘,炎症性変化として経過観察された.2年後,GGO内部に濃度上昇域が出現し,右上葉の縦隔に接する16 mm大,中葉に8 mm大,左上区に8 mm大の結節も認めた.GGOに対して気管支鏡検査で肺腺癌と診断した.GGO以外の結節性病変は肺内転移が否定できなかったが,いずれも完全切除可能と考え手術適応と判断した.まず胸腔鏡下右上葉切除+中葉部分切除を施行した.いずれも腺癌であったが病理学的に全て所見は異なりtriple primaryと診断した.左上区の結節に対して胸腔鏡下左上葉部分切除を施行した.右肺のいずれの病変とも異なる腺癌と診断,4ヵ所の同時性多発肺癌と診断した.多発肺癌は完全切除が可能であれば手術も考慮に入れるべきである.

  • 高田 昌彦, 森永 友紀子, 宮本 良文
    2017 年 31 巻 5 号 p. 667-674
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳男性.1993年生検で胸腺腫と診断され,化学放射線療法後に手術を行ったが,肺動脈浸潤のため腫瘍の可及的切除に終わった.1996年重症筋無力症を発症し,プレドニンにて良好に経過した.同時期に確認された左胸膜播種は徐々に増大したので,2002年肉眼的全摘出術を行った.2007年には多量の血性心囊水をきたし,その細胞診で胸腺腫細胞を認めた.

    2010年貧血の精査で早期直腸癌と赤芽球癆が判明し,直腸癌根治術後に赤芽球癆の自然寛解を認めた.同年12月縦隔内に腫瘍を認め,生検で胸腺腫再発と診断した.これに対し化学療法を行ったが効果なく,これを契機に赤芽球癆が再燃した.

    2012年肺炎を罹患し低γ-グロブリン血症(Good症候群)が判明した.

    その後上記の合併症はよくコントロールされていたが,2016年初回手術から23年後に再発胸腺腫の増大による心不全・呼吸不全で腫瘍死に至った.

  • 福井 崇将, 住友 亮太, 大竹 洋介, 黄 政龍
    2017 年 31 巻 5 号 p. 675-678
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    骨折整復時に使用された鋼線が移動し隣接臓器を損傷した報告はこれまでにも散見される.今回我々は乳児期の開胸手術で使用された鋼線が断裂し,術後20年に気胸を繰り返した一例を経験した.症例は20歳男性.生後6ヵ月時に成熟奇形腫に対して前縦隔腫瘍切除術が行われ,離断された左第3,4,5肋骨を鋼線で固定された.18歳時に健診で左気胸を指摘された既往があり,再度左気胸を発症して受診した.胸腔ドレナージにて一度軽快したが短期間で再発した.胸部CTで第5肋骨から胸腔内に突出する異物を認め,胸腔鏡下に肺瘻閉鎖・異物除去術を施行した.第5肋骨の固定に用いられた鋼線が断裂して胸腔内に突出し肺を損傷していた.鋼線を除去し,肺損傷部を修復した.術後は順調に経過しその後気胸の再発を認めていない.肋骨の固定のため留置された鋼線は長期間を経て断裂することがあり注意を要する.

  • 金山 雅俊, 大﨑 敏弘, 西澤 夏將, 中川 誠, 宗 知子, 小舘 満太郎
    2017 年 31 巻 5 号 p. 679-683
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は65歳女性.CTで指摘された左上葉S1+2の14 mm(5 mmの充実成分)のPart-solid noduleが縮小傾向にないため,診断・治療目的に左上区切除術を施行した.術後6日目の胸部CTで左上区肺静脈断端に16 mmの血栓を認めたため抗凝固療法(ヘパリン持続静注とワーファリン内服)を開始した.その後も脳梗塞などの血栓塞栓症の発症なく,抗凝固療法開始6ヵ月後のCTで血栓の消失を認めたためワーファリンを終了した.肺切除後の肺静脈断端血栓は致死的な動脈塞栓症を引き起こす可能性を秘めた重要な合併症の一つであり,左上葉切除後や残存肺静脈を伴う右上葉・中葉切除後の静脈断端に血栓が多いとされる.今回,左上区切除後に左上区肺静脈断端血栓を生じた症例を経験した.左上区切除においてもできる限り静脈断端を短く中枢側で処理するように心がけることが重要である.

  • 鮫島 譲司, 伊藤 宏之, 中山 治彦, 西井 鉄平, 永島 琢也, 益田 宗孝
    2017 年 31 巻 5 号 p. 684-688
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は77歳男性.血痰を主訴に受診し,肺癌が疑われた.術前の薄切CTでA7a+8bが右主肺動脈本幹背側,上幹肺動脈より末梢で分枝し,上肺静脈と下肺静脈の間を通り,中間気管支幹の縦隔側を走行してS7aとS8bに分布する解剖学的走行異常を認めた.主病変は右下葉の26 mm径の充実性結節であった.右下葉肺癌疑い(cT1cN0M0)に対し,右下葉切除+ND2a-1を施行.術中所見では分葉は良好で,中下葉間は電気メスのみで剥離でき,肺動脈の剥離も施行した.A6とA7b+8a+910が通常の葉間面の肺動脈から分枝し,A7a+8bは中葉気管支の背側から中下葉間を渡って下葉に流入していた.A7a+8bは中下葉間の高さで切離した.右肺動脈の縦隔型下葉枝は過去2例の報告のみと非常に稀であるため,解剖の詳細も含め報告する.

  • 門松 由佳, 川角 佑太, 上野 陽史, 内山 美佳, 森 正一
    2017 年 31 巻 5 号 p. 689-696
    発行日: 2017/07/15
    公開日: 2017/07/15
    ジャーナル フリー

    顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)の発現を認める限局性悪性胸膜中皮腫の1例を経験した.症例は75歳男性で,発熱と胸部違和感のため当院を受診した.胸部CTで肋骨に接する単発性の腫瘤を認めた.血液検査上,炎症反応上昇と発熱を認めたため手術まで抗生剤治療を継続した.術中針生検による迅速病理診断でも確定診断は得られず,左上葉切除と第1・2肋骨合併切除を施行した.免疫組織化学検査で肉腫型の限局性悪性胸膜中皮腫であり,一部の腫瘍細胞は抗G-CSF抗体陽性であった.術後化学療法は施行せず,20ヵ月が経過するが,再発なく生存している.限局性胸膜中皮腫は術中診断が困難な疾患であり,可能なかぎり術前の組織診断が望ましいこと,経過中に原因の特定できない炎症反応上昇を認めた場合はG-CSF産生腫瘍の可能性を検討する必要がある.

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