2018 年 32 巻 5 号 p. 580-586
症例は51歳男性.1年前に咳嗽が持続するため近医を受診した.胸部X線写真で左中肺野に腫瘤影を指摘されたが放置していた.今回,健診で同部位に再び腫瘤影を指摘された.胸部CTで左肺舌区域S4に空洞を有する腫瘤影を認めた.腫瘤は葉間を越えて下葉S8に浸潤していた.CTガイド下肺生検ではリンパ球性間質性肺炎と診断されたが,18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)で腫瘤と肺門リンパ節にFDGの異常集積を認め,原発性肺癌の可能性も考えられた.手術は左肺舌区域とS8部分合併切除を行った.病理検査では多数の虫卵を有する肉芽腫を認め,ウェステルマン肺吸虫症と診断された.ウェステルマン肺吸虫症は比較的稀な疾患であるが,肺腫瘤の鑑別疾患として念頭に置いておく必要がある.また特異な食歴の聴取を忘れずに行うことも重要である.