日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
術前画像診断が困難であった多発肋骨骨折による横隔膜損傷を来した1例
関原 圭吾横手 芙美有本 斉仁長阪 智喜納 五月
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2018 年 32 巻 5 号 p. 606-609

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抄録

胸部外傷は重要臓器の損傷による死亡例も多いが,適切な治療により救命しうる症例もある.今回,肋骨骨折により横隔膜損傷を来し外傷性血胸となった1例を経験した.32歳,男性,てんかんの既往あり.てんかん発作で転倒後,胸痛を主訴に搬送された.右気胸と診断され胸腔ドレーンが挿入された.翌日,CTで右多発肋骨骨折,右血気胸,腹腔内血腫を認めた.血管造影で出血源を同定できず,呼吸器外科へコンサルトされ,緊急手術となった.骨折した第8肋骨が胸腔内へ変位し,壁側胸膜が損傷していた.骨折部位を切除し,血腫を除去すると骨折部位の直下で横隔膜が損傷しており,腹腔へ貫通していたため修復した.術後経過良好,第6病日に退院した.過去の報告でも軽微な横隔膜損傷は画像で指摘困難である.肋骨骨折による横隔膜損傷で血胸を来した報告もある.下位肋骨骨折では横隔膜損傷を疑い術中に十分確認することが重要である.

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