日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
胸腺原発粘表皮癌の1例
橋本 久実子川口 晃司福井 高幸中村 彰太羽切 周平横井 香平
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2018 年 32 巻 7 号 p. 804-807

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抄録

72歳男性.他疾患治療中,胸部X線写真で異常陰影を指摘され,造影CTで前縦隔に境界明瞭な90 mm大の腫瘤を認めた.石灰化や脂肪陰影はなく内部に低吸収域を伴う腫瘤で,FDG-PETでSUVmax 2.69の集積を認めた.血清腫瘍マーカーや抗Ach-R抗体価は正常範囲であった.cT1N0M0 Stage Iの胸腺腫を疑い,胸骨正中切開にて胸腺摘出術,右肺部分切除および心膜合併切除を施行した.病理検査で腫瘍は囊胞成分と充実成分からなり,充実部分には粘液産生細胞,核異型に乏しい扁平上皮細胞,未分化な中間細胞が存在し,低悪性度の粘表皮癌,pT2N0M0 Stage IIと診断された.融合遺伝子MAML2の検索を試みたが本症例では陰性であった.胸腺原発粘表皮癌の予後は組織学的悪性度と臨床病期に相関すると報告されている.本症例はII期だが完全切除且つ低悪性度だったため良好な予後を期待している.

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