日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)を合併した前縦隔神経芽腫の1例
森野 茂行松本 理宗藤田 朋宏木谷 聡一郎中村 昭博
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2021 年 35 巻 7 号 p. 768-773

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抄録

症例は72歳男性.全身倦怠感が出現し,近医で低ナトリウム血症と胸部CTで前縦隔に13 mmの結節を指摘された.低ナトリウム血症と前縦隔腫瘍の精査目的で当院を受診した.SIADHによる低ナトリウム血症と診断し飲水制限塩分摂取食事療法を開始した.治療開始6ヵ月後に血液電解質は改善傾向となった.8ヵ月後の胸部CTで前縦隔腫瘍が増大したため,胸腔鏡下前縦隔腫瘍切除術を施行した.術中所見で右胸腔内に肺の高度な癒着を認めたため胸腔鏡での操作は困難であったが,完全鏡視下に腫瘍を切除することができた.病理所見で胸腺内に腫瘍を認め前縦隔神経芽腫と診断した.術直後より低ナトリウム血症は改善し術後7日目に退院した.術後放射線治療や化学療法を行わずに経過を観察しており,術後20ヵ月で無再発生存中である.成人発見での神経芽腫は極めて稀であり,SIADHを合併した成人前縦隔神経芽腫の1切除例を経験し報告する.

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