2021 年 35 巻 7 号 p. 841-845
症例は67歳男性.右肺上葉に結節病変を指摘され,精査にて原発性肺腺癌(cT1bN0M0 Stage IA2)と診断し,胸腔鏡下右肺上葉切除とリンパ節郭清術を行った.術後に術中の胸水細胞診が<Class V>と診断されたため,病理病期はpT1bN1M1a Stage IVAとなり,術後化学療法(Carboplatin+Pemetrexed;6コース)を行った.術後4ヵ月で一時的に貯留した胸水は消失していたが,術後8ヵ月の胸部レントゲンと胸部CT検査で胸水の再貯留を認めた.胸水の細胞診では悪性の所見はなく,胸水抗酸菌検査にて結核菌PCRと結核菌培養がともに陽性で,結核性胸膜炎と診断した.抗結核療法を6ヵ月間行い,現在,結核性胸膜炎の再燃なく経過中である.肺癌の術後経過中に胸水の再貯留を認める場合は,結核性胸膜炎の鑑別が必要である.