日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
胸腺腫肺転移巣内リンパ球表面抗原の解析
胸腺腫内Tリンパ球分化の可能性
井上 匡美藤井 義敬奥村 明之進竹内 幸康塩野 裕之福原 謙二郎門田 嘉久武田 伸一南 正人尹 亨彦三好 新一郎松田 暉
著者情報
キーワード: 胸腺腫, 肺転移, Tリンパ球, 分化
ジャーナル フリー

1997 年 11 巻 6 号 p. 704-709

詳細
抄録

胸腺腫は正常胸腺にみられる分化途中の未熟Tリンパ球を豊富に含んでいる.胸腺上皮細胞はTリンパ球の分化と選択に重要な役割を果たしていることから, 胸腺腫内の未熟Tリンパ球は腫瘍内で分化している可能性がある.この仮説の傍証を得るために, われわれは肺転移巣内のリンパ球を解析しその成熟度を調べた.CD4-CD8- (DN) cellは3.6%, CD4+CD8+ (DP) cellは 75.2%, CD4+CD8- (CD4SP) cellは9.7%, CD4-CD8+ (CD8SP) cell は11.5% であった.CD1+cell は85.9%であった.CD8SP cellはCD3, TcRαβ, CD69を発現していたが, CD4SP cellの大部分はこれらの表面抗原を発現していない DN cellからDPce11への移行過程のリソパ球であった.これらの結果から, 未熟なTリンパ球が転移巣内にも多数存在し, 胸腺腫の腫瘍細胞すなわち胸腺上皮細胞がTリンパ球の教育に関し不完全ではあるが機能を有している可能性があると考えられた.

著者関連情報
© 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top