1997 年 11 巻 6 号 p. 760-764
症例は67歳の男性.ばち状指, 体重減少を主訴に来院.胸部X線写真にて, 右肺野下半分を占める巨大な腫瘤陰影を認めた.MRIのT2強調像では, 胸壁あるいは腹腔内への浸潤は認めなかった.偶然4年8ヵ月前に撮影した胸部X線写真から, 上下葉間胸膜原発の限局性胸膜中皮腫が巨大化したものと診断し, 手術を行った.腫瘍は肺を縦隔側上方へ圧排し, 特に中下葉の虚脱が著明であったが, 肺実質への浸潤は認めなかった.切除後, 肺の虚脱は完全に消失し, 肉眼的に腫瘍の残存は認めなかった.切除標本は最大径18cm, 重量2000gであり, 病理組織学的には線維型で悪性であった.本疾患は放置すると巨大化し悪性化する可能性が考えられ, 早い段階での外科的切除が必要である.