抄録
症例は59歳の男性である.主訴は唆声で, 胸部CTにおいて大動脈弓下に腫瘤を指摘され, 精査加療目的で入院した.血清CEAは37.5ng/mlと高値を呈した.悪性腫瘍の縦隔リンパ節転移を疑ったが, 全身を検索しても原発巣は発見できなかった.確定診断を得るために手術を行った.左開胸を行うと, 大動脈弓下に腫瘤を認め, 左反回神経, 大動脈, 左主肺動脈, 左主気管支への浸潤を認めた.切除困難と判断し, 腫瘍の生検を行った.病理組織学的に低分化型腺癌と診断した.術後放射線照射を66Gy施行し, 血清CEAは4.6ng/mlまで低下した.本症例は比較的まれな原発不明の縦隔リンパ節癌と考えられた.