2001 年 15 巻 1 号 p. 28-32
症例は10歳, 男児.他院で縦隔腫瘍の診断を受けたのち当院へ転院となった.CTガイド下生検では奇形腫の診断であったが, AFP, hCG, hCG-βが上昇していたため悪性成分の存在を疑い, CDDP, VP-16, ブレオマイシンによる化学療法を3コース施行した.化学療法施行後に各腫瘍マーカーは正常範囲となり, 引き続き胸骨正中切開にて腫瘍摘出を行った.腫瘍は周辺臓器には浸潤しておらず, 完全摘出が可能であった.組織診断はplacental site trophoblastが証明された事からgerm cell tumor, combined typeと診断された.術後6コースのPEB化学療法が追加された.現在再発転移の徴候なく外来通院中である.この患者はまた, 術前の染色体検査によりKlinefelter症候群であると診断された.縦隔原発の胚細胞性腫瘍や胎児性癌は同症候群に合併することがあり, その原因は遺伝的な素因ならびに異常なホルモン状態が原因と考えられている.