日本呼吸器外科学会雑誌
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肺内気管支嚢胞壁から発生した肺腺癌の1例
瀬川 正孝草島 義徳
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キーワード: 肺癌, 腺癌, 気管支嚢胞
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2003 年 17 巻 1 号 p. 72-76

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抄録
症例は75才男性.検診で右下肺野の嚢胞性病変を指摘され当院を受診した.右肺S10に主座をおき, 超鶏卵大で, ニボーを伴う単房性の嚢胞性陰影を認めた.嚢胞壁は厚く不整であり, 所々で乳頭状かつ腫瘤状に嚢胞内腔へ突出していた.B10からのTBLBにて腺癌が得られたため, cT2 N0 M0の腺癌の診断で右肺下葉切除とND2a郭清を施行した.病理組織学的には, 嚢胞は内腔が多列線毛上皮に被覆された気管支嚢胞で, 嚢胞壁には乳頭状腺癌と気管支肺胞上皮癌, 上皮内腺癌, 種々の程度の異型上皮が認められた.これより癌の中心性壊死によって嚢胞性変化が起こったのではなく, 既存の肺内気管支嚢胞を背景に発生したpT2 N0 M0 stage IBの乳頭状腺癌であると診断した.肺内気管支嚢胞における不整な壁肥厚や腫瘤の存在などの異常所見は, 癌の合併の可能性を示唆しており, それが証明された場合には根治的切除が必要である.
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