抄録
血清CA19-9の上昇を伴った縦隔成熟奇形腫の2例を経験した.症例1は, 24歳の女性で, 前胸部痛, 咳嗽, 発熱にて当院を受診し, 縦隔腫瘍と診断した.血清 AFP, CEA, HCG は正常範囲であったが, CA19-9は, 958.0U/ml と高値であった.症例2は, 23歳の男性で, 検診にて胸部異常陰影を指摘され, 当科紹介となり, 縦隔腫瘍と診断した.血清CA19-9は, 47.5U/ml と上昇していた.縦隔奇形腫を疑い手術を施行した.2例とも, 摘出腫瘤の病理診断は, 膵組織を含んだ嚢胞性成熟奇形腫であった.術後, 血清CA19-9はともに正常化した.CA19-9の免疫組織染色では, 奇形腫内の嚢胞壁上皮, 膵組織等に陽性反応が認められた.CA19-9は, 嚢胞性奇形腫に膵組織を含む可能性を考膚する所見となりえるが, 腫瘍の良悪性の鑑別には応用できないと思われた.