日本呼吸器外科学会雑誌
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気管支に対する器械縫合の安全性の検討
器械縫合と手縫い縫合の気管支瘻
滝沢 恒世寺島 雅範小池 輝明
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1993 年 7 巻 7 号 p. 764-769

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抄録

器械縫合の332例と手縫い縫合の500例において気管支に対する器械縫合と手縫い縫合の安全性を比較検討した.気管支瘻発生率は器械縫合332例中8例2.4%, 手縫い縫合500例中6例1.2%であった.一葉切除では器械縫合267例中4例1.5%, Sweet法手縫い縫合253例中1例0.4%, 0verholt法手縫い縫合172例中0例0%の気管支瘻発生率で, 手縫い縫合に比して器械縫合の気管支瘻発生率が高い傾向にあった.一葉切除の器械縫合気管支瘻例では脚高3.5mmのステープルで気管支が強く絞められすぎて損傷している所見が認められた.一葉切除でも気管支壁が厚ければ脚高4.8rnmのステープルを使用した方がよいと考えられた.特に炎症性肥厚のある気管支は器械縫合で損傷がおきやすいので注意を要する.二葉切除では器械縫合40例中3例7.5%, Sweet法手縫い縫合29例中2例6.9%, Overholt法手縫い縫合24例中1例6.4%の気管支瘻発生率であった.肺摘除では器械縫合25例中1例4.1%, Sweet法手縫い縫合12例中2例16.7%, Overholt法手縫い縫合20例中0例0%の気管支瘻発生率であった.Sweet法手縫い縫合は一葉切除, 二葉切除, 肺摘除の順に気管支瘻発生率が高くなった.Sweet法手縫い縫合の気管支瘻例の所見からSweet法縫合は膜様部側に弱点があることが示唆された.肺摘除ではSweet法手縫い縫合より器械縫合の気管支瘻発生率が低かった.今回の対象例では一葉切除, 二葉切除, 肺摘除ともOverholt法手縫い縫合が最も気管支瘻発生率が低かった.

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