1993 年 7 巻 7 号 p. 845-849
症例は72歳の女性で約5年前より左胸部異常影に気づかれていたが, 確診がつかず無治療であった.胸部CT上腫瘍は左胸腔の大部分を占めていたが, 周辺臓器に対しては浸潤性発育は示していなかった.経皮針生検の結果は胸膜中皮腫疑いとの診断であったため, 経過から限局性胸膜中皮腫と診断した.開胸所見では原発部位は明かにできなかったが, 他臓器への浸潤所見はなく, 摘出可能であった.摘出腫瘍は重さ2040gで, 組織学的には膠原線維の増生を伴った紡錘型細胞の増殖が見られ, 一部に核異型が強く, 細胞分裂像の多い部分がありborder-line malignancyの線維性胸膜中皮腫と診断した.限局性胸膜中皮腫症例の中には悪性の例も多くみられるので, 疑いのあるときには放置せず積極的に外科切除を施行すべきであると考えられた.