2020 年 8 巻 p. 71-88
本稿は、ヴァレリアン・ポストフスキーによって1970年代に提唱されたコンプリヘンション・アプローチという外国語教授法の日米両国における受容・影響調査についての論考である。聴解系メソッドの一つに分類される本アプローチは、発表当初こそ我が国でも特に英語教育関係者の間で脚光を浴びたが、本アプローチが特殊な外国語学習環境での実験に基づくものであったことから一般的な教室での適用の可否等の疑問が解決されぬまま、普及することなくいつしか忘れ去られた存在となっていったという経緯がある。実施した調査は文献調査及び米国現地調査であるが、両調査を通じて一般的な外国語教室での導入は妥当ではないとの考察が得られた一方で、現在のICT等を活用した環境下であれば本アプローチに基づく効果的なプログラムの提供も可能なのではないかとの期待も生じた結果となった。