要旨:近年,漁家経営状況は悪化の傾向が見られ,北海道の代表的漁村である函館市南茅部地区においても漁家経営の改善が求められている.しかし,漁業センサスに代表される漁業統計資料では,漁家における兼業の組み合わせを考慮しておらず,主としている漁業種類が同一の経営体において兼業の種類が異なっていても経営体区分として扱われてしまう.このため,より有益であると考えられる兼業の組み合わせを案出することは出来ない.
本研究では,南茅部地区内全漁家の漁業経営データベースの作成を行い,兼業の組み合わせを抽出した.パレート分析の結果,漁業種類別の漁獲金額上位2種が各経営体における漁獲金額の大部分を占めていることから,それぞれの経営体の主要漁業種と,最も漁獲金額が高い兼業種類の組み合わせを兼業タイプと定義した.兼業タイプ別の分析を行った結果,①主要漁業種は同じでも兼業の組み合わせにより漁獲金額が異なる,②組み合わせは同じでも操業地区により漁獲金額のバラつきが大きいタイプ存在することが明確になった.これらの成果によって,今後南茅部地区における兼業タイプの決定要因の解明を行うことが可能になった.
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