2020 年 14 巻 p. 61-72
本稿では,愛知淑徳大学ライティングサポートデスク(WSD)で2017年度後期末に行ったチューター研修に関して報告する。本学WSDの特徴は,初年次生のライティング支援に,学部上級生が支援者(チューター)として携わる点である。本学WSDはリメディアル教育施設の側面を持っているため,「書き手との対話を重視し,一方的な添削はしない」という理念に基づく支援が困難な場合がある。そこで筆者は,ライティング支援において「教える」と「考えさせる」を区別するためのマトリクスを考案し,チューターが教えてよいことと書き手自身に考えさせるべきこととの区別を研修でレクチャーした。本学WSDのようなリメディアル教育の場としてのライティング支援施設では,「教える」ためのスキルの重要性が高い。同時に,書き手のアイディアを引き出し,考えさせるスキルも必要である。各校の実情に合った研修の設計や,柔軟な施設運営が求められる。