2019 年 23 巻 1 号 p. 7-17
【目的】本研究では,介護老人保健施設(以下,老健と略す)に長期入所する高齢者が今後の人生行路の方向づけのために糖尿病とともに生きる自身の人生をどのように意味づけているかを明らかにする.
【方法】糖尿病をもち老健に1年以上入所する高齢者2名を対象にインタビューを行い,逐語録から,管理に影響する条件,編みなおし,軌跡の予想など,病みの軌跡の構成要素を抽出し,解析した.
【結果】両事例とも,長い人生を糖尿病とともに生活する中で,さまざまなライフイベントに遭遇したり,合併症を発症し,それらが管理を促進したり,妨害したりと交錯し,その中で形成された価値観や信念が編みなおしに関係していた.また,今後の見通しが立たない中でも在宅復帰の希望を持ち続けていた.
【考察】糖尿病をもち老健に長期入所する高齢者に対しては,対象者の糖尿病とともに生きてきた病みの軌跡を理解し,本人の希望や願いを支える援助を提供していく必要性が示唆された.