2020 年 24 巻 1 号 p. 9-16
本研究の目的は,外来通院中の糖尿病患者におけるインスリン自己注射手技の実際と対象者の属性,インスリン自己注射に関する知識との関係を明らかにすることである.85名を対象に独自に作成したインスリン自己注射手技チェック表を用いた手技の観察と,インスリン自己注射手技および保存方法に関する知識などについての対面式の質問紙調査を行った.65歳以上の対象者22名に対しては改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いて認知機能の評価を追加して行った.
インスリン自己注射手技に誤りがある対象者は全体の約8割で,皮下注射時の針の留置秒数実測値が短い人ほど誤った手技の項目数が多かった.また改訂長谷川式簡易知能評価スケールの点数が低いほど誤った手技の項目数が有意に多かった.以上より,針の留置時間を確認し高齢者における認知機能を評価することで,正しい手技の維持につながることが示唆された.