物語と感情の研究は様々な角度から進められてきているが,物語のパターンと読者や主人公など登場人物の感情状態の詳細な関係性は未だ明らかになっていない.そこで本稿では,比較的単純な物語構造をもつと推定される子供向けの絵本を対象とし,シーン単位での主人公,その他登場人物,読者それぞれの感情状態と,物語構造を付与したデータセットを構築した.構築したデータセットの分析から,主人公と読者の間では「怒り」「悲しみ」「期待」,全登場人物と読者の間では「驚き」が共起するが,「喜び」「恐れ」「嫌悪」などは読者と登場人物間で共起が見られないことが示唆された.さらに,物語を時系列で分割して感情状態の推移に基づきクラスタリングした結果,「悲劇型」「読者満足型」「ハッピーエンド型」の3種類に分けられることが明らかになった.