抄録
中国では2013年から「義務教育基本均衡県(区・県級市)」の監督指導・認定制度が推進されている。本研究はこの評価認定制度で優秀な成果をあげた中国吉林省のT市に着目し、教員の都市部と農村部の格差の実態を検討する。対象市内の全義務教育学校校長を対象にアンケート調査を行った。収集されたデータにより、国から公表されているデータでは確認できない教員に関する格差が明らかになった。都市部学校より、農村部学校では教員不足、教員の低学歴・低職歴の傾向が見られた。教員の多忙化、高齢化、「幽霊教員」の存在、教員研修・交流の形骸化なども明らかになった。本研究は、中国の「義務教育基本均衡県」の監督指導・認定制度では教員数の配備状況のみに着目しているため、現場で起きている教育格差を看過してしまう危険性を示唆した。さらに、教員に関する格差が依然として存在している理由も考察した。