抄録
鉛直アレー観測記録により得られるS波の減衰定数の周波数依存性のメカニズムを明らかにするため,基盤強震観測網(KiK-net)成田観測点における鉛直アレー観測記録を用いて,PS検層による速度構造を基にSH波の理論スペクトル比から周波数毎にS波の減衰定数を同定し,減衰定数の周波数依存性を詳細に分析した.また,数値実験として成田観測点を模擬した地盤モデルによる応答波形から擬似観測スペクトル比を算出して減衰定数の同定解析を行い,当該周波数依存性の要因を減衰定数の同定解析に含まれる誤差の影響の観点から検討した.その結果,成田観測点におけるS波の減衰定数は,およそ4~5Hzより高周波数側において減衰定数が一定となるバイリニア型の減衰特性を呈し,堆積層-基盤系でおよそ0.4~0.5%の減衰定数の下限値を有することがわかった.一方,およそ2~3Hzより低周波数側では周波数の減少に伴い減衰定数が大きくなる周波数依存性が見られるが,同定解析における波形切り出しの際のタイムウィンドーの影響が減衰定数に含まれている可能性があり,低周波数側の減衰定数は十分に評価できていないことが示唆された.この低周波数側の減衰定数については,同定解析の際のタイムウィンドーの影響を考慮することにより減衰定数は小さくなり,周波数依存性も弱くなることが示される.鉛直アレー観測記録による減衰定数の同定解析において,データ処理や解析の方法によっては見かけ上の周波数依存性が生じる可能性があり,同定解析上の誤差を予めみておくことは重要である.