日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
11 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論文
  • 小林 源裕, 儘田 豊, 堤 英明
    2011 年 11 巻 3 号 p. 3_1-3_20
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    鉛直アレー観測記録により得られるS波の減衰定数の周波数依存性のメカニズムを明らかにするため,基盤強震観測網(KiK-net)成田観測点における鉛直アレー観測記録を用いて,PS検層による速度構造を基にSH波の理論スペクトル比から周波数毎にS波の減衰定数を同定し,減衰定数の周波数依存性を詳細に分析した.また,数値実験として成田観測点を模擬した地盤モデルによる応答波形から擬似観測スペクトル比を算出して減衰定数の同定解析を行い,当該周波数依存性の要因を減衰定数の同定解析に含まれる誤差の影響の観点から検討した.その結果,成田観測点におけるS波の減衰定数は,およそ4~5Hzより高周波数側において減衰定数が一定となるバイリニア型の減衰特性を呈し,堆積層-基盤系でおよそ0.4~0.5%の減衰定数の下限値を有することがわかった.一方,およそ2~3Hzより低周波数側では周波数の減少に伴い減衰定数が大きくなる周波数依存性が見られるが,同定解析における波形切り出しの際のタイムウィンドーの影響が減衰定数に含まれている可能性があり,低周波数側の減衰定数は十分に評価できていないことが示唆された.この低周波数側の減衰定数については,同定解析の際のタイムウィンドーの影響を考慮することにより減衰定数は小さくなり,周波数依存性も弱くなることが示される.鉛直アレー観測記録による減衰定数の同定解析において,データ処理や解析の方法によっては見かけ上の周波数依存性が生じる可能性があり,同定解析上の誤差を予めみておくことは重要である.
  • 湯沢 豊, 工藤 一嘉
    2011 年 11 巻 3 号 p. 3_21-3_39
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    周期1~15秒の経験的地震動予測手法を提案し,観測記録の再現を通じて手法の妥当性について検証を行った。具体的には,全国各地のK-NET,KiK-net及び気象庁震度観測網の強震記録を用いて減衰定数5 %及び1 %の加速度応答スペクトルを求め,別途提案されている経験的基盤地震動予測式より推定された加速度応答スペクトルとの偏差から揺れ易さ係数を評価した。つづいて,求められた結果を空間補間することで全国の揺れ易さ地図を作成した。さらに,基盤地震動予測式と求められた揺れ易さ係数を組み合わせることにより地盤上の地震動を推定し,観測記録の再現が可能であることを示した。
  • 坂井 公俊, 野津 厚
    2011 年 11 巻 3 号 p. 3_40-3_58
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    経験的サイト増幅・位相特性を考慮した統計的グリーン関数法を用いて2004年新潟県中越地震の特性化震源モデルの構築を試みた.波形インバージョンの結果を参照し,4つのアスペリティを配置することにより,波形の良好な再現が可能となることを示した.さらに本地震での大きな特徴であるK-NET小千谷における大速度パルスの生成要因として破壊開始点付近の2つのアスペリティの重要性について確認した.また波形合成の際に経験的位相特性を用いることの妥当性について,構造物の非線形応答という観点から検討を行った.その結果,対象地点において観測された位相特性を用いることで,構造物の非線形応答の再現性が向上することを明らかにした.
  • 荒木 正之, 盛川 仁, 伊藤 貴盛, 谷川 正真, 松本 敬太郎
    2011 年 11 巻 3 号 p. 3_59-3_72
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
     深い地盤構造を知りたいといった目的で行われる微動探査において必要とされる長周期領域の微動の振幅は短周期領域のそれに比べて非常に小さい。しかも,長周期領域ではアナログ回路が持つ1/f ノイズの影響を大きくうけるため,高価で高性能な機器を用いてさえも十分なS/N(信号ノイズ比) をもって観測することが困難な場合もある。
     このような問題を解決するために,長周期領域でも十分な分解能およびS/N を有する超低ノイズフロア,超高分解能のデータロガーを開発した。A/D コンバータ(以下,ADC)には近年低コスト化が著しい24bit のΔΣ 型を採用した。また,1 成分あたり3 チャンネルのADC を用いて,1 倍ゲイン(利得),256 倍ゲインの信号を並行して記録するとともに,同時に入力を短絡してデータロガーの電源リップルノイズも記録する,というハイブリッド方式を採用した。1 倍ゲインおよび256 倍ゲインの記録を組み合わせることで小さな入力信号から大振幅までADC の変換ノイズの少ない部分だけを用いて理論上で32bit相当の広ダイナミックレンジと高い分解能を確保しつつ,長周期領域における大幅なノイズ低減を目指した。特に,電源リップルノイズを信号から減算するという処理を行うことで,ノイズフロアの大幅な低下に成功した。
     データロガーの試作機を作成し,微動レベルが低い地域で実際にセンサーを接続してデータを取得し,開発したデータロガーの性能について検討した。その結果,単なる256倍ゲインの場合に比べて,本研究で提案するシステムでは長周期領域で30 倍以上S/N が拡大し,実効値で5 bit 程度ものダイナミックレンジの拡大を実現した。
  • 鈴木 達矢, 境 有紀
    2011 年 11 巻 3 号 p. 3_73-3_84
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    木造建物の経年劣化と耐震規定による耐力の変化について,既往の研究より求められている年代別被害関数を用いて検討を行った.具体的には,既往の年代別被害関数と整合するような年代別耐力分布を建物群の地震応答解析から求め,全壊した木造建物の築後年分布との対応から耐力と築後年との関係を求めた.そして,経年劣化と耐震規定の2つの要因をモデル化することで分離し,それぞれの影響を推定した.その結果,経年劣化については,築30年で6~7割程度の耐力となるが,その後はほぼ一定,耐震規定については,1981年の改正に伴い,2~3割程度の大きな差が生じるが,その後は,ほとんど変わらないという結果になった.
  • 山口 亮, 翠川 三郎
    2011 年 11 巻 3 号 p. 3_85-3_101
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/31
    ジャーナル フリー
    地盤増幅率の簡便な推定手法の精度向上を目的として、強震記録から得られた地盤増幅率と深さ30mまでの地盤の平均S波速度(AVS30)との関係について検討した。従来の地盤増幅率の推定式においてAVS30に対する係数は一定値とされていたが、その係数が短周期ではAVS30の大きさによって大きく変化することを確認し、その変化を考慮した推定式を提案した。提案した推定式は、従来の方法に比べて、軟弱な地盤ほど卓越周期が長くなるという特性をより正確に再現でき、短周期成分の推定精度が向上することを示した。
feedback
Top