抄録
地震発生後可能な限り早期に建築構造物の健全性や損傷度等を客観的かつ定量的に評価し,継続使用の可否,耐震補強の必要性を判断することは,復旧・復興活動を行うに当たり極めて重要である。構造物の固有振動数を測定し,その低下から構造物全体の損傷を定量的に判定する方法があるが,構造物全体だけでなく,階層ごとの損傷度が判定できれば更に有効な対策を講じることが可能となる。前述の方法では建物の階層ごとの損傷度を評価することは困難である。本論文では,常時微動記録を用いて逆重畳法(Snieder and Şafak, 2006)に基づく層間せん断波速度を測定する手法を提案し,東北地方太平洋沖地 震において被災した9階建SRC造集合住宅に適用して層間せん断波速度を測定し,各層の損傷度を評価した。