日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
報告
東日本大震災津波避難における帰宅行動と立ち寄り行動の影響
後藤 洋三
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 16 巻 10 号 p. 10_86-10_104

詳細
抄録

東日本大震災で自宅が全壊被害を受けた人達の中で、津波来襲までに帰宅した人や避難途中に家族の迎えなどの立ち寄りをした人が、著者の単純加算で44%に達していた。そこで国土交通省と東京大学空間情報科学研究センターでまとめられた聞き取り調査データを用い、岩手県と宮城県の沿岸主要市町をリアス部と平野部に区分し、さらに徒歩避難と自動車避難に区分して、帰宅行動と立ち寄り行動の目的とそれらの影響を分析した。その結果、浸水域を脱して安全域に到達するまでの時間が、避難途中に立ち寄りをすることにより平野部の徒歩避難で3.2倍、リアス部の自動車避難で3.6倍に増加すること、帰宅や立ち寄りの目的には家族・親戚・知人の安否確認や迎えが多く、自動車を使用した立ち寄りの場合はそれらがリアス部で58%、平野部で64%に達すること、などがわかった。さらに、徒歩避難と自動車避難が浸水域を脱して安全域に到達するまでの時間を比較すると、リアス部と平野部、帰宅の有無、立ち寄りの有無、の組み合わせで結果が異なるが、全ての組み合わせをデータ数で加重平均して比較すると、徒歩避難と自動車避難の時間はほぼ同じであった。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本地震工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top