抄録
伝播経路における速度不均質の地震動への影響を調べるために、地震波速度にランダムな揺らぎを与えた媒質モデルを用いた数値シミュレーションに基づき検討を行った。すなわち、3次元不均質媒質中に点震源を仮定した差分法による評価を行い、震央距離約50km (解析波波長比約50) 以内の工学的に重要な近距離での不均質媒質の影響を検討した。不均質媒質でのシミュレーション波には、震源で与えた波形からの乱れ、コーダ波の発生、スペクトル形状の変化が確認され、その影響は震央距離5~10km程度から確認された。均質媒質による計算波との比較を行った結果、震源放射特性の影響を取り除いても、不均質媒質での計算波には伝播の影響による振幅等のばらつきが生じていることが確認され、そのばらつきには不均質媒質の特性による差異、周波数依存性が現れていることがわかった。計算波は、距離とともに均質媒質に対する振幅低下が大きくなり、散乱減衰の生じていることが確認された。また、震源の放射特性を考慮しても散乱減衰には方位による差異はほとんどみられないことが確認された。以上のことから震源から近距離においても、不均質媒質による影響がシミュレーション波形や最大値のばらつきに大きく表れる可能性があることが確認された。