抄録
従来、有限差分法による強震動や長周期地震動の広域予測において、計算機の記憶容量(メモリ)等の制約から取り扱うことが難しかったS波速度100m/sのような表層の低速度層を考慮できるようにするために、表層を含む浅部地盤のモデル化法の工夫を試み、地震基盤から表層までを考慮できる簡易数値解析手法を検討した。具体的には、工学的基盤以浅の浅部地盤における複数層の地盤物性を平均化したいわゆる「浅部等価地盤」を仮想的に設けて、有限差分法により地震基盤から表層までを一体化した地盤モデルを用いて地震動を計算する。一体解析により得られた地表面での地震動を浅部等価地盤に基づく重複反射理論により工学的基盤まで一度引き戻し、最終的に本来(真)の浅部地盤を用いて工学的基盤より立ち上げて地表面における地震動を再計算するものである。また、有限差分法の際の計算機メモリをより一層抑えるために、工学的基盤の地盤物性をそのまま表層まで反映させたいわゆる「浅部一様地盤」を仮想的に設けて、先と同様の手続きにより地震動を計算する手法も検討した。それらの結果、両検討手法ともに工学的基盤で解析領域を分離して地震動を計算する従来のいわゆる分離解析に比べて、より精度の高い地震動評価が可能となることが示された。地震基盤から表層までの一体解析を行うことにより、短周期領域に加えて長周期領域における地震動評価の精度向上を図ることができる。